第10条 【国民の要件】
日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
重要度:3
解説等:メモ書き
○趣旨
・本条を受けて、国籍法によって日本国民たる要件が定められている。
・国籍法2条は、原則として子どもは親の国籍を取得する旨を定め、いわゆる血統主義を採用。
・これには、憲法11条、12条、13条などが「 国民 」という文言を用いていることなどから、日本の国籍を持たない外国人にも人権規定の効力が及ぶか否かで争いがあるが、 通説、判例は 「 外国人にも権利の性質上適用可能な人権規定はすべて及ぶ 」としている。
※では、どのような人権が外国人には認められないのかという問題?
・その代表的なものとしては、参政権が挙げられる。
⇒参政権は、国民が自国の政治に参加する権利であり、その性質上、国民にのみ認められる権利であるとされているからである。
※判例は 「 地方レベルの参政権を認めても違憲ではない 」 としつつ、「 国レベルの選挙権や被選挙権は、外国人には保障されない 」 としている。
⇒最判平5.2.26、最判平7.2.28、最判平10.3.13参照。
○参考
※趣旨
本条は、日本国民であるために必要な条件を、法律で定めるということを規定している(これは、法律以外の命令などで定めることを禁止するということをも含んでいる)。
日本国民とは、日本の構成員の総称であり、日本国籍を有する者のことである。
⇒この日本国民を広く解釈すると、以下になる。
①天皇・皇室 皇籍に属する
⇒皇室典範に定められている。
②一般国民 一般民籍に属する
⇒国籍法の定めによる。
※ある個人が日本国籍を有するということは、日本の国民としてあらゆる国家権力との関係において服従関係に立つということを意味する。そのため、日本国民が世界のどの国にあっても、つねに日本の主権に服従すべき関係を有するということにあるということになる。
※日本の国籍法では、国籍の取得方法に以下の二種類を規定している。
①先天的取得=日本で生まれることにより、自然的に日本国籍を取得するという意味。
②後天的取得=外国人が日本人になる(これを帰化という)ことにより、日本国籍を取得することである。
①の先天的取得については、二つの考え方がある。
・血統主義と属人主義
※人が生まれるということは、その子供と父母の間に血縁関係が生じる。
・土地主義と属地主義
※生まれた子供と出生地の間に地縁関係が生じる。
※日本では、血統主義が原則である。例外的に、土地主義である。
⇒どちらか一方だけをとると、無国籍者が生じるため。
※先天的取得についての条文
国籍法第2条
子は、次の場合には、日本国民とする。
1 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
2 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
3 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。
※国籍法第2条第3号が、土地主義とされるものである。
※そして帰化には、以下の3種類がある。
1 普通帰化
(国籍法第4条)
① 日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によつて、日本の国籍を取得することができる。
② 帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない。
(国籍法第5条)
① 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
1 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
2 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
3 素行が善良であること。
4 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
5 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
6 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
② 法務大臣は、外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合において、日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると認めるときは、その者が前項第五号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
2 特別帰化
(国籍法第6条)
次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が前条第一項第一号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
1 日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有するもの
2 日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの
3 引き続き十年以上日本に居所を有する者
(国籍法第7条)
日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するものについても、同様とする。
(国籍法第8条)
次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号、第二号及び第四号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
1 日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの
2 日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であつたもの
3 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除く。)で日本に住所を有するもの
4 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの
3 大帰化
(国籍法第9条)
日本に特別の功労のある外国人については、法務大臣は、第五条第一項の規定にかかわらず、国会の承認を得て、その帰化を許可することができる。
※普通帰化、特別帰化、大帰化のいずれについても、法務大臣の許可が必要とされる。
・なお、日本国籍の喪失については、国籍法第11条から第13条に規定されている。
○重要判例
• 広島市集団行進及び集団示威運動に関する条例違反、公務執行妨害被告事件
(最高裁判例 昭和35年07月20日) 憲法21条、憲法13条関連
• 職業安定法違反被告事件
(最高裁判例 昭和33年05月06日)憲法13条,憲法18条,刑法18条関連
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