民法のお勉強 物権編 第4日

※物権の本質

※物権には、直接支配性と排他性があり、債権とは異なる部分である。

⇒このため、物権は、物を直接支配して利益を受ける排他的な権利と定義される。

(1)直接支配性

1、直接支配性とは、権利の満足を得るために他人の行為を必要としないことをいう。

2、たとえば地上権者は、いったん地上権設定契約を締結した以上は、所有者の意思

とは無関係に土地を使用できる。

3、これに対して、賃借権は、「土地を使用できる権利」を意味する。債権とは、「特定の相手方に対して、ある行為をするよう請求する権利」に過ぎないので、賃借権も、「賃貸人に対して、土地を使用させるよう請求する権利」に過ぎない。

4、この意味で、物権には直接支配性があり、債権には直接支配性がないということになる。また、直接支配性を根拠として、物権には物権的請求権(後述)が認められるが、債権には原則として物権的請求権に準ずる権利は認められていない。


(2)排他支配性

1、排他性とは、同一の目的物の上に1個の物権が存するときは、これと両立しない物権が並存することを許さないことをいう。

2、ある土地について、家を建てるための地上権を設定した場合は、別の人が家を建てるための地上権を取得することはできない。

3、ただし、所有権と地上権のように、相矛盾しない権利関係は両立できることになる。また、同一の土地上に複数の抵当権が成立することも可能とされる。

4、これに対し、債権には排他性がない。


(3)対象の物の特定・独立性

1、その他、物権の目的物は物、すなわち有体物に限るが(89条)、ビール一ダースというように単に観念上定められたものではなく、このビールというように目的物が現存し特定していることを要する。

2、また、一個の物権が成立するためには物の一部ではなく独立の物であり、かつ物の集合ではなく一個の物であることを要するとされる(一物一権主義)。

⇒ただし財団の上の抵当権はこの最後の要件の例外となることに注意。


※物権の一般的効力

※すべての物権に共通の一般的効力、すなわち物権的請求権と優先的効力がある。

(1)優先的効力

(ア)物権相互間

1、互いに相容れない物権相互間では、時間的に先に成立したものが優先するという物権相互間の優先的効力がある。

2、抵当権成立の後にさらに抵当権を設定すると、二番抵当権になる。同じく地上権を設定すると先の抵当権の実行(競売)によって後の地上権は効力を失うことになる。

3、ただし、先取特権には例外が多い。先取特権は公益ないし公平という理由で認められるので、その効力も法律で一定する必要があるとされる。また、占有権は排他性もなく優先的効力もない特殊のものである。


(イ)債権との関係

1、債権との関係においては、債権の内容が物権の成立と相容れないものであるときには、常に物権が優先するという債権との関係における優先的効力がある。

2、債権は強制執行または破産の手続に訴えるときにその効力を最も発揮する。債務者の財産に直接の支配を及ぼすが、そのときでも、その財産の上に存在する抵当権その他の物権はこれに優先する。


(ウ)対抗要件との関係(物権)

※不動産

1、不動産に関する物権変動(物権の得喪および変更)については、第三者に対抗するためには、不動産登記法による登記が必要である(民法177条)。

2、例えば、土地の所有者であったAが同一の土地をBとCの双方に売却した場合、BとCはその土地について先に所有権の移転登記をしなければ相手方に土地の所有権を対抗できない。

3、物権相互間の優先の順位は、登記の前後にもよるものであるが、この場合の登記は、後に本登記がなされるのであれば、仮登記でもよいことになっている(不登法106条参考)。

4、不動産の賃借権は債権であるが、特に登記をすることが認められ、それによってその後に成立する物権に対して優先権を認められている(605条、不登法81条、借地借家10条参考)。

5、さらに、建物・農地などの賃借権は、目的物の引渡しがあれば、その後の物権取得者に優先される(借地借家31条1項、農地18条1項参考)。

6、不動産売買の予約のように権利の移転などの請求権は、これを保全するために仮登記を行うことにより(不登法105条2号)、その後に成立する物権に優先することになる。

※動産

1、動産に関する物権の譲渡については、第三者に対抗するためには、引渡しが必要である(民法178条)。ここでいう引渡しには、現実の引渡し、簡易の引渡し、指図による占有移転、占有改定が含まれることになる。

2、法人の場合は、動産譲渡登記により、第三者に対抗することもできる。


かいひろし法律の部屋

今学んでいる法律の学問を記します。

0コメント

  • 1000 / 1000