会社法のお勉強 第6日

※会社の能力

一 会社の権利能力

1、会社は法人であるから、すべて法人格を有し、原則として、自然人と全く同様に一般的権利能力が認められている。

⇒会社の個人的権利能力、すなわち個別の権利を享有できる能力については、会社の法人たる性格上であるがゆえ、次のような制限が問題となる。


1 性質による制限

1、会社は、自然人と異なるのであるから、自然人に特有な身体・生命に関する人格権・親族法上の権利を享有できないとされる。

⇒但し、会社の名称である商号権、会社の名誉・信用などに関する人格権は制限されない。


2 法令による制限

1、会社も法令上の制限が存在することにより、当然にその範囲内においてのみ権利を有し義務を負うことになる。

⇒たとえば、会社が解散・破産した場合などに、清算の目的の範囲内でのみ権利を有し、義務を負うとされる(会476条、645条、破35条)。


3 目的による制限

1、民法は、法人は定款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負うと定めている(民43条)。

⇒会社も法人であり、会社にもこの民法の規定(公益法人の規定)が類推適用されるかが問題となる。


(1)会社の権利能力と定款の目的

※定款所定の目的による制限について

○肯定説

1、民43条は法人一般に関する通則の規定であり、会社にも適用ないし類推適用されるべきとする。

2、会社は、一定の目的のために設立されたものであるから、その範囲内でのみ権利能力を有する。また、そうすることが、出資者・会社債権者の保護に適うとされる。

3、登記により、定款所定の目的を公示しているから、第三者に不測の損害を被らせるおそれは小さい。

但し、定款所定の目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的たる行為それ自体にとどまらず、その目的を遂行する上で直接または間接に必要な行為すべてを含むものである。


○否定説

1、民43条は公益法人に関する規定であり、会社に準用する旨の規定はないので、類推適用は認めるべきではない。

2、出資者たる株主の利益は、会社による取引の安全を犠牲にしてまで保護をする必要はない。

とくに、会社が目的の範囲外の行為をしながら、後になって不利となったときに、目的外として行為の無効を主張することは不当である。

3、要するに、この問題は社員(株主)の利益と第三者の利益とをどのように調整すべきかであり、

現在多くの株主にとって重要なことは会社の経営・財務内容であって、会社の定款所定の目的にどれほどの意義と価値を認めているかは疑問というる。

4、現代の会社は多くの対外的活動が予定されるとすれば、取引の安全保護に重点をおく制限否定説が正当だとする。

したがって、会社の権利能力は定款所定の目的による制限をうけず、対外関係において、会社の行為はすべて有効と解する。


※ただし、会社の代表取締役が、このような目的の範囲外の行為をなした場合に不利益を受ける株主の保護からすると、株主の差止請求権(306条)、監査役の差止請求権(385)、事後ならば取締役に対する損害賠償請求(423条1項)によって救済を図れば足りることになる。

⇒いわゆる定款所定の目的は、会社の権利能力または代表取締役の代表権を制限するものではなく、単に取締役の職務執行についての会社の内部関係のおける制限であると解することができる。

・・・・・

【参考】

(1)目的による制限の有無

1、まず、民法34条(旧43条)は「法人は」「目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」としている。

⇒この点、民法は公益法人について規定していると解されているので、公益法人には当然に民法34条の適用がある。


※では、かかる規定は、営利法人たる会社にも類推適用されるのか。


1、この点、多数説は会社にも類推適用されるとする。

※理由としては、

①形式的に法人一般に共通する原則とされていること。

②実質的に、法人は一定の目的のために設立された組織であるからその目的のために設立された組織であるからその目的の範囲内においてのみ能力を有すると解するのが自然。

③資本を拠出した者も定款所定の目的のために会社財産が運用されることを期待して出資したものであること。


2、他方、反対説(否定説)では、本条は会社に類推適用されないとする。

理由として、

①形式的には民法43条は、公益法人に対する規定であり、会社には準用されない。

②実質的に会社の目的は登記によって公示されるが、会社と取引する者はいちいち登記を見て会社の目的を範囲を確かめることはできないなど

3、そして反対説の場合に、目的条項がどのような意味をなすのかが、

次に問題となるが、

①代表機関の権限を制限するにとどまる説、

②会社の能力制限、代表機関の権限制限ではなく、単に会社機関の行動範囲についての義務を定めるにとどまる説等があることである。

4、新民法では33条2項に「営利事業を営むことを目的とする法人」と規定されており、民法上会社をはじめとする営利法人への適用も当然に予定していることである。よって、新民法下においては会社にも34条が直接適用されると解されることになる。


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