刑法のお勉強 第8日

(ハ)類推適用の禁止

1、法律上の用語概念であり、ある事柄に関する規定の趣旨を別の事柄についても及ばせ、新たな法規範を発見ないし創造し、それを適用して解釈するための法解釈技術のことをいう。

⇒そのような趣旨のことを「類推の基礎」といい、そのための解釈技術を「類推解釈」と呼んでいる。

2、刑事法においては、罪刑法定主義は法で定められてはじめて構成されるが、準用は立法技術であるためその適用が予め明示されているため罪刑が法で定められていることになり罪刑法定主義に抵触しない。しかし類推適用は解釈技術にすぎず罪刑が法で定められているわけではなく事前の明示を欠くため罪刑法定主義に抵触し許されないとされている(類推適用の禁止)。


① 類推解釈

1、類推解釈とは、法規を超えた事実についてそれに類似する事項について定めた法規を適用することをいう。

⇒刑法において類推解釈をすることは、法律が予想している範囲を超えて刑法の適法を認めることになるので、罪刑法定主義に反し許されない。

※ただし、行為者の利益になる類推解釈の場合は罪刑法定主義に反するものではなく、自由に許される。


② 拡張解釈

1、類推解釈は禁止されているが、拡張解釈は許されるとする。

⇒個々の事案に刑罰法規を適用するには、裁判官によって解釈による補充がなされることは当然必要だからである。

※ここで、拡張解釈とは、法律の予定する範囲内でその用語を通常の意味よりも広く解釈することをいう。

(拡張解釈が許容された例としては、公文書偽造罪における「文書」に写真コピーが含まれるとした判例がある。)


(2)実質的内容

1、罪刑法定主義を実質的な人権保障原理とするためには、単に行為の時に犯罪と刑罰を規定した法律がありさえすればよいというものではなく、さらにその刑罰法規の内容が明確であって、かつ適正なものでなけらばならない。ここに、罪刑法定主義の実質面がクローズアップされることになる。


(イ)明確性の原則

1、明確性の原則とは、立法者は刑罰法規の内容を具体的かつ明確に規定しなければならないとする原則をいう。

⇒刑罰法規の内容が不明確で漠然としているため客観的に把握できないときは、その法規は罪刑法定主義から許されず、憲法31条に違反し無効となる。

2、ある刑罰法規があいまい不明確のゆえに憲法31条に違反するものと認めるべきかどうかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読み取れるかどうかによってこれを決定する。


(a)犯罪の明確性

1、犯罪の成立要件についてみると、その解釈の範囲は、一般国民の予測可能性の範囲内にとどまるものでなければならない。

2、したがって、一般国民が刑罰法規によって何が禁止されているかを法文から理解することができない場合は、その刑罰法規は不明確であって違憲・無効(不明確故に無効)ということになる。


 ※「刑罰法規適正の原則」

1、刑罰法規適正の原則とは、刑罰法規に定められる犯罪は、当該行為を犯罪とする合理的根拠があるものでなければならず、刑罰は、その犯罪に均衡した適性なものでなけれればならないとする原則をいう。

2、犯罪と刑罰が法律に定められていても、その内容が処罰の合理的根拠を欠くときは刑罰権の濫用となり、実質的に国民の人権を侵害することになるからである。

※この原則には、明確性の原則と、罪刑の均衡とが含まれる。


(b)刑罰の明確性

1、刑罰法規の明確性を判断する基準は、行為者の主観ではなく通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為が刑罰法規の適用を受けるものかどうかという基準による。

(判例も一般論としては採用【最判昭和50.9.10:徳島市公安条例事件判決】


※「絶対的不定期刑の禁止」

1、絶対的不定期刑とは「~した者は刑に処する」というように刑種と刑量をともに法定しない場合、及び「~した者は懲役に処する」のごとく刑種だけ法定しても、軽量を法定しない場合の法定刑のことをいう。

2、絶対的不定期刑は、刑罰を法律で定めることを要求した法律主義に反するので禁止される。

3、刑種と刑量をともに相対的に法定したものは、相対的不定期刑として許されている。


かいひろし法律の部屋

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