民法のお勉強 総論 第13日

1 一般社団法人の設立行為の法的性質

①合同行為説(通説)

※一般社団法人の設立行為の法的性質を合同行為と解する見解。

⇒この見解は、一般社団法人の設立行為は2人以上の設立時社員を必要とし、設立時社員の間に債権・債務を発生させることを目的とした意思表示の対立が存在しないことから、設立の法的性質を契約でも単独行為でもなく合同行為であると考える。


※合同行為説によると、一般社団法人の設立行為というものは、個々の設立時社員と意思表示が全体的に合同し個々の意思表示とは独立した存在と考えることになるので、設立時社員が制限行為能力者である場合や、意思表示に瑕疵がある場合でも設立行為の効力は影響を受けないこととなる。


②契約説

一般社団法人の設立行為の法的性質を解約と解する見解。

⇒この見解は、一般社団法人の設立行為にも設立時社員の間に利益の対立が存在することから、設立の法的性質を契約であると考える。

※契約説によると、設立時社員が制限行為能力者である場合や意思表示に瑕疵がある場合、設立行為の効力は影響を受けることになる。


※一般社団法人の設立

(1)一般社団法人の設立行為


1.定款の作成および公証人の認証(10条~13条)

・設立時社員(2名以上)が共同で、11条の記載事項(監事,理事会、会計監査人を置く場合はその旨も)を記した定款を作成して、全員が署名か記名押印する。

⇒この定款は公証人の認証を受けなければ効力を生じない

※記載できない事項

・社員に剰余金や残余財産の分配をする旨(11条2項)

・社員総会の決議事項を他の機関が決定できるとする定め

・社員総会で決議事項全部について社員が議決権を行使できない旨

これらの定款の定めは無効となる。


2.設立時理事の選任(15条~19条・21条)

・設立時社員は、定款の認証後に遅滞なく、議決権の過半数をもって設立時理事(監事や会計監査人を置く場合はその者)を選任する必要がある。

(定款で定めなかった場合)。

⇒法人成立前に、過半数をもって解任も可(設立時監事の解任には三分の二以上必要とされる)

※役員の欠格事由は65条にある(法人や成年被後見人等)。

※議決権は、設立時社員が一個ずつ持つが、定款で別段の定めをすることも 可能である

※理事会を置く場合は、理事は三人以上必要であり、この理事らは過半数をもって代表理事を決定しなければならない。


3.設立時理事による設立手続きの調査(20条)

・設立時理事(監事がいる場合は監事も)は、選任後に遅滞なく、設立手続きに違反がないか調査し、違反や不当事項があるときは設立時役員にその旨を通知する必要がある。


4.設立の登記申請(22条)

・一般社団法人は、主たる事務所の所在地で設立の登記をすることにより成立する。

⇒設立時理事(代表理事)が法定期限内に、法務局か地方法務局で設立の登記申請をすることになる。


※一般社団法人設立の責任

1.設立時社員や設立役員の責任

・設立時社員)、設立理事、設立時監事は、法人設立について任務を怠った時は、その法人に対して生じた損害を賠償する責任を負う。

(23条1項、166条1項)


・職務を行うについて悪意か重過失があり第三者に損害が生じた場合は、該当する設立時社員などは、その損害を賠償する責任を負う。

(23条2項、166条2項)


※責任のある者が複数の場合、それらの者は連帯債務者となる(24条、167条)

※これらの責任は総社員の同意がなければ免除できない(25条、168条)


2.設立時社員のみの責任

・設立時社員は、法人が成立しなかったときは、連帯して、設立に関する行為の責任を負い、支出した費用を負担する


(2)定款の作成

・定款とは、設立者である2以上の者が、どのような社団を作るかを決める社団の根本なる規則をいう。

⇒定款の作成は、社団法人が人の結合からなるため、必ず2以上のものが協力してなすということから合同行為たる性質を有する。

※したがって、契約と異なり、一人の者の意思表示が、意思の欠缺・能力の制限等により取り消されても、定款作成行為の効力に影響を及ぼさない。

  

○定款の必要的記載事項は次の通りである。

・その一つを欠いても、定款は無効となる。

① 目的

② 名称

③ 主たる事務所の所在地

④ 設立時社員の氏名又は名称及び住所

⑤ 社員の資格の得喪に関する規定

⑥ 公告方法

⑦ 事業年度

※それ以外の事項は、任意的記載事項として、それを定款に記載すると、必要的記載事項と同一の効力(たとえば、当該事項の変更については38条の手続によることを要する)をもつことになる。


(3)一般社団法人設立行為の性質

・設立行為者中に制限行為能力者がいたり錯誤者がいて、その者の行為が取り消されたり(120条1項)、無効(95条)となっても、設立行為は影響を受けないという意味で合同行為説が有力とされる。


(4)社員

・社員は、定款の定めにより、一般社団法人に対し、経費を支払う義務を負う(一般法27条)。

⇒これには、任意退社(同法28条)、除名(同法30条)、社員名簿(同法31条)等の定めがある。

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