民法条文整理 第31条・32条

民法第31条(失踪の宣告の効力)

前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。


重要度3

メモ書き

【解説】

※民法第30条の失踪宣告の効力の発生時期について規定している。

※普通失踪(民法第30条1項)の場合は生死不明の状態が始まってから7年後に、特別失踪(民法第30条2項)の場合は危難の去った時に死亡したものとみなされる。宣告のあった日に死亡とみなされるのではないことに注意が必要である。

※宣告によって、その者は死亡したものとみなされ、当該期日にさかのぼって死亡の効果(相続、配偶者との婚姻関係の終了等)が発生する。

【解釈】

1、失踪宣告の効力として、婚姻が解消され、相続が開始する。

2、失踪者が現に生存すること、又は、宣告において死亡したとみなされた時期とは異なる時期に死亡したとこが証明された場合には、失踪宣告の取消手続(32条)をとらなければならない(失踪宣告が取り消されない限り、失踪宣告の効力は失われない)。

3、失踪宣告の効果である「死亡したものとみなす」は、失踪者の従来の住所での私法関係につき失踪者が死亡したと同じ法的効果を認めるにすぎない。したがって、失踪宣告を受けた者の権利能力や行為能力まで奪うものではなく、他所で活動する失踪者には宣告の効果は及ばない。

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民法第32条(失踪の宣告の取消し)

1. 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。

2. 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。


重要度3

メモ書き

【解説】

※失踪宣告の取消しの要件とその効力、そしてその後の権利関係の清算方法について規定している。

※失踪宣告を受けた者が生存していたり、又は死亡とみなされた時期と異なる時期に死亡したことが判明しても、「失踪宣告が取り消されない限り失踪宣告の効果は失われない。」これらの証明があると、本人もしくは利害関係人の請求により、家庭裁判所は失踪の宣告を取り消さなければならない。

※失踪宣告が取り消されると、宣告は初めからなかったことになる。よって宣告によって発生した法律関係は元に戻ることになるが、失踪宣告後、取り消し前に善意でした行為の効力に影響はない。ここで言う善意は、行為の当事者双方が善意であることを要求する。

※失踪宣告を原因として直接に財産を得た者(相続人、受遺者等)は現存利益の返還義務を負う。この返還義務は善意の者であっても負う。悪意の場合は不当利得の悪意の受益者(民法第704条)となり、受けた利益に利息を付して返還する義務を負う、と解するのが通説である。

【解釈】

1、1項ただし書の善意とは、失踪宣告が事実と異なることを知らないことを意味し、無過失であることを要しない。善意が必要な者は、当事者双方である。

2、2項は悪意者には適用されない。悪意者には704条が適用され、利益に利息等を付加して返還しなければならない(通説)。


【暗記1】

※失踪宣告の取消しの要件・効果

要件

①失踪宣告を受けた者が生存していること、又は失踪宣告による死亡時と実際の死亡時と異なったときに死亡したことが証明されたこと。

② 本人又は利害関係人から取消しの請求があったこと。


効果

家庭裁判所は失踪宣告を取り消さなければならない。

→ 失踪宣告により発生した身分上・財産上の法律効果はすべて消滅する。

①失踪宣告後・取消前に善意でなした法律行為の効果は遡及的に消滅しない(32条1項ただし書)。

②失踪宣告を原因として財産を取得した者は、現存利益の限度で返還義務を負う(32条2項)。ただし、悪意者には適用されない。



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