民法(総論)のお勉強 第15日目

第四章 物

第1節 物の意義とその分類

○物の意義

1、物権の客体としての「物」は「有体物」、すなわち有形的に存在するものである。

⇒液体・気体・固体がそうである。その結果、自然力・債権・著作権など「無体物」は物権の客体とならない。

2、このように、法が、「物」を有体物に限定しようとしたのは、全面的支配権として物権の典型である所有権の客体は全面的・排他的支配の客体となるのに適したものでなければならないということであり、またそれが物権と債権の区別を明確にする。

3、しかしながら、それでは今日の経済生活上不都合が必ず生じるので、この原則に対しては、実質上少なからず例外が認められているのが現実である。 


○物の分類

1、民法上,物権の客体となる有体物のことを「物」という。 この「物」には,動産と不動産の2種類があるとされている。


第二節 動産と不動産

○動産と不動産の区別

①動産

1、動産は,不動産以外のすべての「物」です。

2、自動車などは登録制度があるため,土地や建物のような不動産と類似しているところがあるが,あくまで動産である。

※無記名債権

1、債権は,人に対する観念的な権利であって有体物ではないので,当然「物」には当たらない。

2、しかし,例外がある。それが「無記名債権」である。

3、無記名債権だけは,債権でありながら,動産として,つまり「物」として扱われることになる。

4、無記名債権とは,証券に債権者の表示がなく,債権の成立,存続及び行使の全てが証券によってなされる債権をいう。例えば,商品券とか乗車券とかは,この無記名債権に当たる。

5、無記名債権は,その証券が受け取ったときに受け取った人が権利を取得し,証券を持っている間は権利を持っていることになり,権利を行使するときは証券を呈示しなければならない。

6、つまり,すべてが証券によって行われることになります。現実的にみれば,権利=証券である。 そのため,債権でありながら,むしろその証券という「物」自体に権利が乗っかっているような感じなので,動産として扱われることになる。


②不動産

1、不動産とは,「土地」及び「土地の定着物」のことをいいます。

2、土地とは何かということは言うまでもないと思いますが,分かりにくいのは,土地の定着物の方です。

3、土地の定着物とは,土地の構成物ではないが,土地に固定しているため,取引通念上,土地と一体のものとして扱われている物のこといいます。


※土地の構成物

1、土地の構成物とは,土・砂などまさに土地そのものを構成している物のことをいいます。または,取引通念上,土地と切り離して取引をする価値のない物,例えば,土地に生えている草や樹木なども,原則として土地の構成物ということになる。

2、よく間違っている人がいるのですが,土地の構成物と土地の定着物とは全然違う物であるので注意が必要である。

3、土地の構成物は土地から独立して別個の不動産となることはありませんが,土地の定着物は土地とは別個の不動産です。


※土地の定着物

1、土地構成物が上記のような物だとすると,土地の定着物とは,これら以外で土地と一体の物として取り扱われている物のことをいうことになります。

2、代表的な物は「建物」です。外国では,建物は土地と一体の不動産として扱われている場合も多いのですが,日本の民法では,土地と建物は別個の不動産として取り扱われています。

3、その証拠に,土地と建物とは別々に登記をしなければならないこととなり,固定資産税も土地と建物では別々に課税されているのが現実である。

4、その他にも,明認方法を施した樹木や立木法の登録をした樹木なども,土地とは別個の不動産として扱われることになります。


※その他の分類の方法

1、「物」については,動産・不動産の他に,主物・従物という分類,天然果実と法定果実という分類,特定物・不特定物という分類,可分物・不可分物という分類,代替物・不代替物という分類,消費物・非消費物という分類,あるいは,融通物・不融通物という分類など,実に様々な分類が可能である。


○不動産

①土地の概念

1 土地とは、地表を中心として人の支配及び利用の可能な範囲で、その上下に及ぶ立体的存在をいう。

2 地表の鉱物や岩石は、土地そのものを構成する分子にすぎず、独立の不動産ではない。また、人工的に付着させたものであっても、取引観念上土地の構成部分とみるべきもの(※1)は、独立の所有権の客体とならない。

※1

石垣・敷石・取り外し困難な庭石・井戸・ンネルなど


②土地の個数

※土地は、人為的に区分され、一筆ごとに地番を付して、その個数を計算する。すなわち、一個の土地とは、土地登記簿の表題部に1筆の土地として記載されたものをいう。


③土地の定着物

1、定着物とは、現に土地に直接又は間接に固定されており、取引観念上土地に継続的に固定されてしようされるものと認められるものをいう。

2、取引観念という客観的基準で判定するのは、その判定を当事者の意思に任せたのでは、動産・不動産の区別や、この区別や、この区別に結びつけられた法的効果(特に公示方法)が当事者の意思に左右されることになって不当だからである。

3、石灯籠・仮植中の植物・仮小屋は土地の「定着物」ではない。また、土地・建物に据え付けられた機械については、固定性の如何によって判定される。


※建物

1、建物は常に独立の不動産とされ、土地とは別の登記簿が設けられている。

2、建築中の建物は、どの段階に達すれば建物といえるか。

※判例は、屋根瓦がふかれ荒壁が塗られた程度に達すれば建物になるとしている。

※なお、不動産登記の先例によれば、建物とは屋根及び周壁又はこれに類するものを有し(外気分断性)、居住・貯蔵などの用途に供される。土地に定着した建造物をいう。

3、建物の個数は、土地とは異なり登記簿によるのではなく、社会観念によって決せられ、棟によって数えるのが原則である。ただし、一棟の建物について数個の所有権が成立することがある(区分所有権等)


※立木

1、立木は、本来土地の定着物として土地所有権と一体をなし、独立して物権の客体とならないのを原則とする。ただし、242条但し書きに該当するときは例外が認められる。

(242条但し書き)

「ただし、権原によりてその物を附属せしめたる他人の権利を妨げない」


※さらに、立木法によって登記された樹木の集団は、地盤たる土地と離れて独立した不動産とみなされ、これだけを譲渡し、又は抵当権の目的とすることができる

※さらに、立木法によらない樹木の集団も、特にその生育する地盤から独立した別個の物として取引する必要があれば、土地と分離して所有権譲渡の目的とすることができる。ただし、第三者に対する対抗要件として明認方法(木を削って所有者名を墨書するなど)が必要である。


※未分離の果実

※未分離のみかん(大判大5.9.20)・桑葉(大判大9.5.5)稲立毛(大判大8.3.3)なども、明認方法を対抗要件としつつ、独立の物として取引できる。この場合、判例は、これら未分離の果実を独立の動産に準じて取り扱っている。


【参考】

1、物の分類として最も重要なのは「不動産」と「動産」の区別である。

2、民法はその概念規定があり、すなわち、「土地及びその定着物」を不動産として、それ以外の物を動産としている。

3、この両者は、自然的性質・経済的価値等において異なるところから、民法はこの両者についていくつかの重要な取扱いの差異を認めている。

 

①公示方法   

※不動産は登記があり、動産については引渡しである。


②公信力    

※不動産はなく、動産については認められる。

【解説】

※公信の原則に基づき、信頼通りの権利が存在するのと同様の法律効果を生じさせる効力。「登記に公信力がない」ものとされ、真の権利者に落ち度が認められない事案では、真実の権利状態と異なる登記を信頼して取引した者も当該権利を取得することができません。


③用役物権   

※不動産は認められ、動産については認められない。

【解説】

※他人の土地を一定の目的のために使用収益できる制限物権。民法上には、地上権・永小作権・地役権・入会権の4種がこれにあたります。


④相隣関係   

※不動産はあり、動産については無い。

【解説】

※隣接する土地の利用権者(主に所有者)間において、相互にその利用を調整し合う形で法律上当然に発生する権利関係。隣地の使用・通行や排水・流水、境界、竹木、境界付近の工作物に関する種々の規定が置かれています。


⑤無主物     

※不動産は国庫に帰属、動産については先占者が所有権取得

【解説】

※現に所有者のいない物。所有権を放棄するなどして無主となった動産については、いちはやく自主占有を行った者が新たな所有者となります。


⑥付合の要件  

※不動産は242条で、動産については243条~246条

【解説】

※所有者の異なる複数の物が結合して分離が不可能ないしは不相当と認められるような状態になること。これにより、独立性をうしなった物の所有権は消滅し、不動産や主たる動産の所有者に吸収・帰属するものとして、所有権が単一化されます。

※ただし、賃借権のような正当な権利に基づき不動産に附属させた物には、例外的に附合を生じさせず、当該付属物の所有者に所有権が留保されます。


⑦先取特権    

※特定不動産上に成立(登記を要件)、動産については特定動産上に成立(占有を要件としない。)


⑧質権

※不動産は成立要件が占有移転であり、対抗要件は登記である。動産は成立要件は占有移転であり、対抗要件は占有継続である。


⑨抵当権の客体  

※不動産は客体となる。動産は、原則客体とならないが、例外として登記できる動産等がある。


○動産

※動産 

1、不動産以外のものはすべて動産である。

2、土地に定着する物でも、定着物でない物(仮植中の植木)は動産である。また、判例によれば、未分離の果実は動産とされる。

3、このほか、無記名債権(商品券・乗車券・劇場鑑賞券)は、債権者を特定せず、証券の正当な所持人をもって権利者とする債権は動産とみなされることになる。したがって、その譲渡の公示方法は証券の引渡であり、さらに即時取得の適用もある。

4、金銭は特殊な動産である。すなわち、金銭は、法的支払手段としての価値表象物であり、動産の一種ではあるが、通常、物としの個性を持たず、価値そのものと考えられる。したがって、金銭には、86条2項の適用はなく、金銭の所有権は占有にしたがって移転し、即時取得の適用もない。








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