憲法のお勉強 第11日

3 ナシオン主権・プープル主権と国民主権

※ナシオン主権とプープル主権のまとめ

※ナシオン&プープルは、君主主義を否定した後

⇒近代市民革命時に、2つの憲法に、立憲主義の主権原理として導入されている。


A ナシオン主権

○ナシオン主権(1791年憲法)

※ナシオン主権とは、「国民」を「過去から未来までを通じて存在する、抽象的な人間の集団」と考える説。

⇒この説によると、主権者たる「国民」の意思は抽象的にしか存在しておらず、これは自由委任に基づく代表者による討論の中で再現されるとする。

※この点においては、ナシオン主権は代表民主制(純粋代表制)、制限選挙制と密接に結びつく。

⇒制限選挙制と結びつくのは、抽象的な国民の意思を再現すべき自由委任に基づく代表者の選出には、一定の能力が必要とされると考えられる部分があるからである。


国民 = 不可分であり、永続的集合体 → 観念的、抽象的な部分

※一人一人の「意思」は見られない

⇒自分の意思は、授権で代表者を通じて現すしかない部分がある。

(純粋代表制、間接民主制)

※一人一人の具体的意思が想定されないので、強制(命令)委任による、代表者の拘束は禁止される。

⇒つまり、ナシオン主権では、自由委任が原則である。また、国民意思を反映させるという建前を否定することから、普通選挙は要請されず、制限選挙とされるということ。

(選挙権も「公務」と見る)


(b)プープル主権

※「国民」を「現に存在する人の集団(能動的なる有権者団体)」と考える説。

⇒この説によると、主権者たる「国民」の意思は、現に存在する人々の具体的な意思であり、直接民主制あるいは命令委任に基づく代表者によって具体的に表される。

※この点においては、プープル主権は直接民主制、普通選挙制と密接に結びつく部分がある。

⇒普通選挙制と結びつくのは、全国民からあまねく意思を吸い上げることで、具体的な国民の意思が表れると考えられることがあげられる。


※国民=具体的市民(国家構成員、集合体)、少なくとも、建前として自分の意思を持てる。

⇒国民一人一人の意思決定が建前として承認され、存在する。

※結果、直接民主制(原則)+ 強制(命令)委任による拘束の承認。

(もしくは、代表機構が国民意思反映→「半代表」) 

※国民意思を活かすために、普通選挙制度が要請される。

(選挙権は、各個人の「権利」であると考えられる)


4 国家権力行使の方法

A 総説

※日本国憲法では、直接民主制的な制度も設けられているが、代表民主制(間接民主制)が、原則である。


憲法前文1項2段

権力は国民の代表者がこれを行使し


43条1項

両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する


※日本国憲法は例外的に、直接民主制的制度を3つ採用している。

(1)最高裁判所裁判官の国民審査制(79条2項)

(2)憲法改正国民投票制(96条)

(3)地方特別法住民投票制(95条)


(参考)

【79条2~4項】

2、最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行われる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。

3、前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。

4、審査に関する事項は、法律でこれを定める。


【96条】

1、この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

2、憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。


【95条】

一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。


【参考】

※「プレビシット」について

プレビシットは、本来は国民(人民)投票と訳されが、実際上は特定支配者の信任を国民投票にする意で使用されている。


(例:ナポレオン帝政確立の国民投票などがある)

※ヒトラーのような独裁者が、直接民主制によって全て国民投票に問えば、独裁制を民主的手続きで粉飾することができる。これを、プレビシットの危険という。


※国民投票制の可否について

【問題の所在の部分】

※日本国憲法下で国民みずから、国政レベルの国会意思を決定する直接民主制的方法は許されるか?

(国家の重要施策決定を国民投票に付する法律はOKかという部分?)


【論証点を見る】

※思うに、大規模で組織性が低いという有権者団の性質に鑑みれば、憲法は原則という部分で、代表民主制を採用していると考える(前文1項2段、43条1項)。

⇒よって、憲法は、国民自ら国政レベルの国家意思を決定する直接民主制方法を、2つに限定する趣旨があると解される。

※最高裁判所裁判官の国民審査(79条2項)および憲法改正国民投票制(96条)など


【結論を見る】

※したがって、国家の重要施策決定を国民投票に付する様な法律は許されないと解するとする。


【補足を参照】

※もっとも、国家意思形成を国民に諮問する助言型国民投票制は、国民投票結果が直ちに国会を法的に拘束しないことから、憲法上必ずしも禁止されていないと解される。

⇒代表民主制→直接民主制2つに限定→国民投票法案否定している。

 

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