刑法のお勉強 第3日

三 人権保障機能

(1)意義

※刑法は、一定の侵害行為を犯罪と規定し、これに対する刑罰が予め明示しており、一般市民は犯罪を犯さない限り刑罰を科されることはない。また、犯罪者はその規定の範囲内でのみ処罰される。

⇒このように、国家の刑罰権の行使を制限することで、一般市民及び犯罪を犯した者の自由を保障する機能を保障的機能という。

※ここから、刑法は「善良な市民のマグナ・カルタ」であると同時に「犯罪人のマグナ・カルタ」であるといわれる。「マグナ・カルタ的機能」ともいわれている。


※マグナ・カルタ=国王の専制から国民の権利・自由を守るための典拠として作られた。

⇒もともとは、1215年,イギリスの封建諸侯が国王に迫り,王権の制限と諸侯の権利を確認させた文書である。


【法益保護機能との関係】

※法益保護機能は処罰の範囲を拡大する傾向にあるのに対し、人権保障機能というのは、処罰の範囲を限定する方向にある傾向となる。


四 刑罰権にある根拠

1 刑罰権とは

※刑罰権とは、犯罪者をその犯した罪により処罰できる権能であり、通常は犯罪者をその罪により処罰できる国家の権限をいう。刑罰権には、一般的刑罰権と個別的刑罰権がある。

①一般的刑罰権と個別的刑罰権

※一般的刑罰権とは犯罪が存在した場合に(通常は国家が)その犯罪を処罰する権能をいい、個別的刑罰権(刑罰請求権)とは具体的な犯罪に対して犯罪を行ったものを処罰できることをいう。


②観念的刑罰権と現実的刑罰権

※上記に記した個別的刑罰権において、実際に刑罰を物理的に科すことができるためには、手続き(犯人をつかまえ、裁判を行い、その罪の罰が確定すること)が必要である。そのため、個別的刑罰権を未確定な段階での観念的刑罰権(裁判における刑罰の適用)と、確定的な刑罰権たる現実的刑罰権(死刑、懲役など確定した刑罰の執行による部分)に分けることができる。


2 刑罰権の根拠

①抑止刑論

※一般人による犯罪または犯罪者による再犯を抑止することを刑罰の正当性の根拠とする考え方である。


②応報刑論

※刑罰は過去の犯罪行為に対する応報として犯人に苦痛を与えるためのものだとする考え方をいう。

⇒絶対的応報刑論、相対的応報刑論に分類される。

A 絶対的応報刑論

※絶対的応報刑論とは、刑罰は悪に対する悪反動であるとして、動と反動とは均衡していなければならず、悪反動であるからその内容は害悪でなければならないとする考え方をいう。⇒いわば、刑罰によって犯罪を相殺しようとする考え方である。カントによって主張された説であり、刑罰の目的に関する絶対主義と結びついている。


B 相対的応報刑論

※相対的応報刑論とは、刑罰が応報であることを認めつつも、刑罰は同時に犯罪防止にとって必要かつ有効でなくてはならないとする考え方をいう。刑罰の目的を考慮する点で絶対的応報刑論と異なる。

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