民法第1条 (基本原則)
1 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。
重要度3
メモ書き
※第1項は、「私権の内容について規定」している。
※第2項は、「私権の行使及び義務の履行における信義誠実の原則」について規定している。
※第3項は、「権利濫用の禁止について規定」している。
【解説】
○第一条
※私権とは私法関係の権利のこと。
⇔対義語として公権という言葉がある。
⇒私法とは「私人間の法律」で、その代表が民法ということになる。わたくし(私)の権利という意味では無い。
※そして私権を持つことができるのは自然人と法人。
※「公共の福祉」とは
1条1項では、私権という権利そのものが、公共の福祉、つまり社会一般の利益に反するものであってはならないとしている。
(参考)
憲法13条でも「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」という規定を置いている。
○第二項
「信義に従い誠実に行わなければならない」とは
※権利を行使するときは「相手の信頼を裏切らないようまじめに行いなさい」という意味です。
⇒これを「信義誠実の原則」といいます。
○第三項
※権利の濫用とは「自分の持っている権利をみだり(濫り)に用いることは許されない」とういことです。
【民法第1条の濫用関連判例】
※大審院昭和10年10月5日宇奈月温泉事件に濫用の判例があります。
○重要判例
①宇奈月温泉事件(大審院昭和10年10月5日)
※温泉旅館を営む甲が、湯口より旅館まで乙土地上を通して湯を引いていたが、それを知った丙が乙土地を購入し、その後、甲に法外な値段で土地を買取れと要求し、さもなければ湯を引くことを禁じるとした事件につき、丙の要求を棄却した事件
【判旨】
1.温泉の引湯管(木管)の敷地2坪を含む敷地を買収し、その侵害者に対して引湯管の除去を迫り、他方では引湯管の敷地2坪ならびに隣接地(約3000坪)を不相当に巨額の代金で買取るよう要求し、それ以外の一切の協調に応じないとするのは、「単に外形上の所有権の行使にとどまり、不当な利益を得るための行為であつて権利の濫用」にほかならない。
2.所有権侵害による損害の程度がわずかで侵害除去のためには莫大な出費(侵害除去のための出費として、工事費1万2千円、工事期間270日が必要となる)と、損失を生ずる場合に、第三者が自ら不必要な土地を買収取得し、不当の利益を得ようとして、所有権行使に藉口して侵害者に対して侵害の除去を迫ると同時に、右土地を不相当に巨額な代金で買取るべき旨の要求を提示し(本件土地の価格は、わずかに30余円にすぎないところ、本件と地と隣接するの土地を合わせて2万余円で買取るよう要求した)、他の一切の協調には応じない旨主張するなどの事情があるときは、右侵害排除の請求は権利の濫用に外ならないので、Xの請求は認められないとした。
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