憲法条文整理 第19条

第19条【思想及び良心の自由】 

 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。


 重要度:4  

メモ書き: 解説等

【解説】 

・明治憲法下の日本においては、「反国家的な特定の思想が弾圧される」という事実があったのだが、その意味に反省を踏まえての条文でもある。 

・そんな意味もあり、本条は、「思想及び良心といった内心の自由を侵害してはならない」ことを明言している。

⇒国家によって、特定の思想や良心を強制、推奨することは禁止される。   

・なお、裁判所が、名誉毀損などを行った加害者に対して謝罪広告を新聞紙等に掲載することを命じることが、 本条の保障する良心の自由の侵害に当たらないかが争われたこともあるが、 判例では 「 単に事態の真相を告白し、陳謝の意を表明させるにとどまる限り は、 憲法19条に違反するものではない」としている。 

(最判昭31.7.4 謝罪広告請求事件  )


○参考 

・思想及び良心とは、「内心におけるものの見方や考え方(世界観、人生観、主義、信条)などのことである。」 

⇒「思想の自由は、人が内心に抱く考え方の自由が外部の強制・圧迫・差別待遇により妨げられないこと」、つまり、「人の精神活動の自由が外部の力から保障されている状態」のことであり、そして、この自由は、民主主義の根底をなす信教の自由、表現の自由、学問の自由などの源泉となるものである。  

・良心とは、「思想の中の多少とも道徳的な側面」を取り上げたにすぎず、良心の自由は広い意味における思想の自由に含まれることとなる

 ⇒要するに、人間の内心の根底にある義なる精神そのもの である 

・思想及び良心の自由には、自分の思想及び良心について、沈黙する自由を含むのかどうかという問題がある。

 ・裁判などで、「証人または鑑定人に対して証言や鑑定をする義務を課している」(刑事訴訟法第146条以下、第165条以下、民事訴訟法第280条以下など) 

・新聞記者が証人としての宣誓を拒否した事件においては、

取材源を隠すことは、表現の自由を保障した憲法第21条によって保障されるものではない」としている。

(最高裁判例昭和27年8月6日)  

・新聞などに謝罪広告を出すよう強制する裁判の判決については、

謝罪広告は屈辱的もしくは苦役的労苦を科したり、または個人の倫理的思想、良心の自由を侵害することを要求するものではないとしている

(最高裁判例昭和31年7月4日)。

 ※ただし、国が裁判という権力作用で、自分の行為が誤りであったということを公に表現することを命じることは、良心の自由を侵すという意見も多い。また、他の先進国では、名誉回復のために損害賠償を命じる判決を下しても、原則として謝罪広告を命じる判決を下すことは認められていないのも事実である。 


○重要判例 

• 雇傭契約解除無効確認俸給支払請求(十勝女子商業学校事件 1952年(昭和27年)2月22日最高裁判例)

• 三菱樹脂事件 - 1973年(昭和48年)12月12日 最高裁 破棄差し戻し

※大学卒業後、三菱樹脂株式会社に就職したが、3ヶ月の試用期間が終了する直前、入社面接試験の時に学生運動に関係していたことを隠していたとして、本採用しない通告を受けた。本採用拒否は、第14条、第19条に違反し無効だと、訴えを起こした。

争点:

第19条「思想・信条の自由」による差別か。

国民私人相互間に憲法上の権利保障が及ぶか。 

• 東京地裁判決:1967年(昭和42年)7月17日、本採用拒否は解雇権の乱用である。原告勝訴 

• 東京高裁判決:1968年(昭和43年)6月12日、信条による差別の禁止は、第14条、労働基準法第3条で定められている。入社試験時に、政治的思想、信条に関係ある事項を申告させることは公序良俗に反する。原告勝訴 

• 最高裁判決:憲法は、思想・信条の自由や法の下の平等を保障するとともに、第22条、第29条等で財産権の行使、経済活動の自由をも保障している。企業は雇用の自由を有し、思想・信条の自由を理由として雇入れを拒んでも違法とはいえない。本採用の拒否は雇入れ後の解雇にあたり、信条を理由とする解雇は労働基準法第3条違反となる。また、憲法の保障する自由権は、国・地方公共団体の統治行動に対するもので、私人間相互の関係を直接規律するものではないと述べている。


 • 昭和女子大事件 - 1974年(昭和49年)7月19日 

• 「よど号」ハイジャック事件新聞記事抹消事件 (判例検索システム)

 • 謝罪広告をめぐる合憲性に関する事件 • 日野「君が代」伴奏拒否訴訟 2007年(平成19年)2月27日最高裁第三小法廷判決 

• 入学式において「君が代」伴奏を公立小学校の音楽専科の教諭に校長が命令することは、「君が代」伴奏拒否が原告の有する世界観及び歴史観と一般に不可分に結びつくといえず、原告の有する世界観及び歴史観を否定するとは直ちにいえないこと、国歌斉唱が入学式等で広く行われていたこと等の事情に照らして入学式で「君が代」を伴奏することが原告の世界観を告白することを強制することにつながることとはいえないこと、さらに、憲法15条2項において、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と定めており、原告も法令等に従い、かつ、上司の命令に忠実に従わなければならない地位にある者であって、「小学校学習指導要領において入学式等において国歌斉唱を行うことを定められている事等から照らして、校長が原告にこのような職務命令を行うことは目的及び内容において不合理であるといえないことなどの点に照らして、校長の職務命令は憲法19条に違反しない。」とした。

 

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