第18条 【奴隷的拘束及び苦役からの自由】
何人も、「いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」
重要度:4
メモ書き:解説等
【解説】
・人権保障の基本となる、人身の自由の基本原則をこの条文にて定めている。
・人を奴隷的拘束に置くことは、 たとえ「本人の同意があったとしても絶対的に禁止」されている。 ・「 苦役 」 とは、 「通常考えられる程度以上に苦痛を伴うような強制的な労務」をいう。
⇒本人の意思に反して 「 苦役 」 を強制することは原則として禁止されているが、「 犯罪による処罰の場合には例外的に許される」としていることである。
・なお、徴兵制については、「 憲法に兵役義務の規定がないことから本条に反する 」とするのが通説です。
○参考
※趣旨
・本条は、自由権的基本権に属する人身の自由を保障する刑事司法の根本原則について規定している。
※人身の自由
・人身の自由とは、「身体に対する一切の不当な束縛を受けない自由」のことである。
⇒思想及び良心の自由とともに「自由権の中で、最も原初的で基礎的」なものである。
・人身の自由は、私人間(国民と国民)においての「拘禁からの自由も含まれるし、国家権力からの自由も含まれる。」
※本条の奴隷的拘束とは、「奴隷に類すると考えられるような自由の束縛や人格を無視したような束縛」のことである。
⇒例えば、強制労働、監獄部屋、人身売買などが考えられる。
・また、「私人間における奴隷的束縛を内容とする契約は、公序良俗に反するものとして無効」である(民法第90条)。また、これは刑罰の対象となる。
・本条後半の意に反する苦役とは、「普通人がいくらかでも苦痛を伴う程度の役務」のことである(奴隷的拘束には至らない程度)。
したがって、徴兵制度や国民徴用などは、現在の憲法では許されないことになる。これは、国と国民の間だけではなく、私人間でも同様の意味がある。労働基準法では、次のように規定(以下参照)
労働基準法 第5条
・使用者は、「暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段」によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
労働基準法 第117条
・第五条の規定に違反した者は、これを「一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金」に処する。
職業安定法 第63条
・次の各号のいずれかに該当する者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。
1 暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者
2 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者
※ただし、意に反する苦役については、「犯罪による処罰の場合は、例外として許されている。」
刑罰は、もともと本人の意思に反するものであるため、当然といえるのである。しかし、この場合であっても、意に反する苦役が、奴隷的拘束であったり残虐なものである場合は、現代の憲法においては絶対に許されない意味がある。
○重要判例
• 職業安定法違反被告事件(最高裁判例 昭和33年05月06日)
憲法11条,憲法13条,刑法18条関連
• 全農林警職法事件(最高裁判例 昭和48年04月25日)
憲法28条、憲法21条、憲法31条 関連
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