行政法のお勉強 第11日

1 行政立法

・行政立法とは、行政機関が法文のような形式で定めている規範の意味をもつ。

(立法の意義を見れば、一般的,抽象的な規範の定立作用である。具体的には議会における成文の法規範の制定作用をさす。)

・憲法第41条には、国会が「国の唯一の立法機関である」と定めている。

⇒ここにいう立法は「実質的意味の立法を意味」するものとされている、ゆえに原則として、実質的意義の立法は立法機関たる議会(国会)によって担われると考える。

※行政立法の例は、内閣が政令を制定することや、各大臣が制定する府令・省令などで、これは形式的には行政作用となるが、実質的な意味においては立法作用の性質をもっている。


2 行政立法の種類

・行政立法は、法形式により、またはその実質的な意味において各種に分類される。

(1)法形式による分類

(ア)政令

・政令は、憲法73条6号規定に基づいて、内閣が制定するものである。

⇒閣議決定を経て成立する。

※天皇により公布される(憲法7条1項)。

(イ)内閣府令・省令

・内閣府令は内閣府の長である内閣総理大臣が制定する。

・省令は各省大臣がその分担管理する行政事務について制定する。

※内閣府令・省令は、いずれも憲法、法律および政令に劣ることになる。

行政立法には、法規命令と行政規則の2種類に区別することができる。

(ウ)外局規則

・外局である委員会・各庁の長官の制定するもの。

⇒たとえば、国家公安委員会規則・公正取引委員会規則・公害等調査委員会規則・中央労働委員会規則がこれにあたる。

(エ)独立機関の規則規則

・内閣から独立の機関である会計検査院・人事院には、それぞれ規則の制定権が認められる。

(オ)告示・訓令・通達

・各省大臣、各委員会・各庁の長官が、その所掌事務について発するもの


(2)実質的な意味においての分類

①法規命令

・法規命令とは、行政立法のうち法規としての性質のものをいう。

※これは委任命令と執行命令とに分かれる。

⇒私人の権利や自由などに直接の影響を及ぼすことが予定されている。  

(ア)執行命令

・これは、上位の法令(憲法・法律その他の法令)を執行するために定立された規範で、上位の法令において定められた国民の権利・義務を詳細に説明することを内容とした命令である。

⇒一般的(包括的)な発令権限の規定が定められていれば、制定可能であるとされる。

※実施命令ともいう。

(イ)委任命令

・これは、法律その他の上級の法令に基づいて発せられる命令であり、受任命令とも呼ばれる。

⇒執行命令の場合と異なり、例えば罰則を設けることができるなど、国民の権利を制限し、義務を課すことが可能である。

※一般的な発令権限の規定だけでなく、対象を特定した形での委任が必要であり、また、日本法においては、一般的・包括的な委任は許容されないとされる。

※しばしばある命令の内容が委任の範囲に属するかについて争われることがあり、例えば猿払事件などがその例である。

【判例】

猿払事件(最高裁昭49年11月6日) 

事案: 

猿払村の郵便局員Xは、衆議院議員総選挙の際に、自分の所属する組合が推薦する候補者の選挙用ポスターを掲示板に貼り、また他の人に貼るように頼んで配布しようとした。 勤務時間外に行ったポスター貼りであったことが、国家公務員の政治活動を禁止する国家公務員法102条1項違反として起訴される。 


 争点: 

公務員の政治活動を禁止することは許されるか。  

※肯定され、許されるとされた。   

・公務員の政治活動の禁止によって、行政の中立的運営が確保され、これに対する国民の信頼が維持されることは、憲法の要請にかなうものであり、公務員の政治的中立性が維持されることは、国民全体の利益に他ならない。   

⇒したがって公務員の政治的中立性を損なうおそれのある公務員の政治活動を禁止することは、それが合理的でやむをえない限度にとどまるものである限り、憲法の許容するところである。


②行政規則

・行政規則は、行政立法のうち、法規の性質を持たないもののことをいい、行政命令あるいは行政規程とも呼ばれる。

※これは私人の権利や自由などに直接の影響を及ぼさないものである。

⇒基本的に行政内部における一般的・抽象的な規範のことをいう。


・法規の性質を持たないため、法律の委任は不要であるとされる。

⇒形式も、内規、要綱、通達によるのが通例である

(政令・省令など命令の形式による場合もある)。


・ 行政規則は、国民・裁判所に対する法的拘束力を持たず、たとえ行政機関が、自ら定めた行政規則に違反したとしても、原則として、違法とはならない。

⇒しかし、行政規則であるからといって、直ちに外部的効果を持たないわけではない

(法規命令と行政規則との区別は、相対的なものである)、との指摘も見られる。

※それと同時に、法規命令と行政規則という分類も無意味ではない、との指摘もある。 

(例) 行政手続法の審査基準・行政指導の基準を定めた指導要綱 ・営造物規則 など


(ア)告示

・告示とは、行政庁が決定した事項等を公式に一般に知らせることである

⇒判例は、学習指導要領に法規性を認めている。

(イ) 訓令・通達

・訓令・通達は、上級庁が下級庁に指揮・監督するためにする命令。

⇒法令解釈の基準を通達という形式で定立することがしばしば行われるが(通達行政)、訓令に従って行政作用が行われても、そのことは当該行政作用が適法であることを保障するものではない。

かいひろし法律の部屋

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