憲法論文を書いてみた 第1日

今日のテーマ:法の支配

1 法の支配の意義と内容

(1)法の支配とは

「人の支配」に対する「法の支配」として用いられ

公権力が法という客観的な規範に基づいて行使されることを求めた原理である。

法によって国家権力を拘束することにより、国民の権利と自由を保障し、確保することを目的とした自由主義的原理でもある。


※法の支配の内容として重要なもの

①法律に対する憲法の優位が認められていること

(最高法規性の概念である)

②基本的人権が保障ができている事

③司法権が優位すること

④法の内容及び手続きが適正であること

(適正手続きの保障である)


参考

19世紀の憲法学者A・V・ダイシー

・法の支配は、次のことを意味するといっている。

①国の通常の裁判所によって通常な法的な方式で確立された法の違反の場合を

除き処罰されず、財産を侵害されない。

②法の前の平等、すなわちすべての身分の者が国の通常の法と通常裁判所の

裁判に服する。

③憲法の一般原則は、個人の事件において裁判所によって確定される個人の権

利の結果である。


2 法治主義との関係

※この考えはイギリスで形成されている

13世紀の法学者ヘンリー・ブラクトン

「国王は何人の下にもあるべきではない。しかし、神の法の下にあるべきである」

と述べている点である。

(2)この法の支配は英米法に由来するが、大陸法と呼ばれる「法治主義」とは区別

されることである。

先ほどのイギリスの憲法学者のダイシーのまとめた要点をアメリカ的に引き継いだ

部分を見てみると。

その観念を受け継ぐこと、合衆国憲法の制定より。

①議会に対する憲法の優位が明確化される

②司法審査権の確立により、憲法は、裁判所によって執行される裁判規範が

出来上がる

③議会に対しても執行されうることが確立する


※解説

①法の支配の「法」は、個人の権利および自由を保障する正当な内容を持つことを意味するが、法治主義における「法」は、議会により制定された形式的な法律を意味するので、内容の正当性は問題にされないという部分が浮き彫りになる。

②これに対して、法の支配は、最高位の法である憲法により行政府も立法府も拘束される意味を持ち、これとくらべる法治主義は、行政府が立法府(議会)の制定にかかる法律に拘束されることを要求するにすぎない意味がある。

※今の世の中では、この法治主義も人権の規制の根拠となりうる法律の内容の

正当性を要求している部分も見えているところもあり、実質的な法治主義とという観点からは、法の支配との違いは相対化しているのが現状であること。


3 日本国憲法の規定の法の支配

○日本国憲法

※すべての政府の権力を拘束する法として制定されており、

最高法規について定めた第10章のなかの98条で、

「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」

・この意味を明確にして、

明文の規定(81条)で司法審査制を導入し、憲法が裁判規範として裁判所によって国会にも執行される意味をもつ。

※憲法は、

・国民の権利を基本的人権として保障し、

・裁判所によって国会にも執行されることを確保

※これにより、日本も法の支配を受け継いでいる。


解説

まず、81条ではその規定により

①法律に対する憲法の優位(最高法規性)を明確にしている

②そして第三章に詳細な人権のカタログなる意味を設け、基本的人権を保障している

また、81条では裁判所に違憲審査を認めて、裁判規範としての憲法が立法府にも及ぼされることで、

③司法権の優位が確立することにより、これを確実な意味に仕上げている

さらに憲法31条は、アメリカの憲法に由来した部分もあり、

④法の内容及び手続の適性を要求していると解される部分である。

このほかに、国民主権の原理の採用(1条・前文)をうたい、国会を唯一の立法機関とすること(41条)

また、76条2項で行政裁判所を禁止して、法の支配の体制を作り上げている。


4 憲法解釈に及ぼす影響

このようは法の支配の原理は、日本国憲法の重要な各条項を解釈する際の指針としても最重視すべきであり、すなわち法の支配は、憲法の最高法規としての拠り所として、その基本精神に矛盾する解釈は到底許されるものではない。

※その問題とは

この問題の中には、憲法改正という大きな意味合いも含まれており、今日の憲法改正の意味がいかにあるべきかを問うものでもある。


5 法の支配と憲法改正の是非

大事なのは、憲法の枠内で、 将来の憲法変革の完成 に向け国家を正しく構築することである。

⇒これが欠けていれば、「法の支配」という体制に見える「国家平和」をいかに考えるかが重要であり、憲法にうたわれる「国民の権利を基本的人権として保障」、この部分と、「裁判所によって国会にも執行されることを確保」される意味が欠如するような体制では国は成り立つことはないと心得ることが重要である。


6 特別権力関係論の否定という問題

(1)たとえば、法の支配を採用する日本国憲法においては、特別権力関係論は否定すべきである。

この特別権力関係論とは、公法上の特別の権力の法律原因に基づく包括的な支配服従の関係がある場合において、法治主義を排除して、人権制約にも法律の根拠を要せず、司法審査をも排除する理論であるのだが、これが法の支配の観念の下では、法治主義の排除は到底ゆるされることではなく、人権制約においても法律の根拠は最重要であり、原則として司法審査は排除できないのは当然の意味でもある。


※特別関係理論をくまなく見る

・この特別の法律関係における人権とは、特別権力関係理論(19世紀のドイツ公法理論に起源)をおくものである

(1)意義、同理論の問題点 

《特別権力関係理論の内容をみる》

①法治主義の排除

公権力は法律の根拠なくして、特別権力関係に属する私人を包括的に支配可能。

②人権制限

公権力は特別権力関係に属する私人の人権を法律の根拠なくして制限可能である点。

③司法審査の排除

特別権力関係内部における公権力の行使は司法審査に服さない。


参考

(2)修正された特別権力関係論もある

①私人の同意に基づく場合には、法律の根拠なく制限可能とする説である。

②包括的な法律の授権があれば、その範囲内で個別の法律がなくとも一般的な

人権も制約可能とする説である。


7 違憲審査権の強化

(2)裁判所の違憲審査権(81条)も強化する解釈が必要となる。

⇒違憲審査権は、憲法の最高法規性を実質的に担保するもので、重要な制度である。

法の支配の原理を維持するうえで不可欠。

したがって、司法審査が及ばない国家行為(例えば、統治行為)はできるだけ限定的に解釈すべきである。


8 31条の解釈

(3)また、憲法31条は、刑事手続法定主義を採用しているが、法の支配の下では、刑事手続の適性を保障していると見るべきで、さらには実体規定の適性をも要求すると解釈すべきである


9 41条の「立法」の意義と法の支配

(4)他にも、法の支配に実現という観点で解釈すべき問題がある。

この点において、法の支配の下では、国勢調査権の強化など、内閣に対する国会の民主的コントールが重視されること、また憲法41条の立法も広義に解釈される点である。


41条は、国会を「国の唯一の立法機関」と定める。この規定はいかなる意義を持つか…その意味について。

1 「唯一の」の意義

・41条が「唯一の」立法機関と定めた意義は、みるからに二つある。

①国の立法行為は、憲法に特別に定められた場合を除き、常に国会によってなされるべきであること、すなわち原則として立法権を国会が独占する国会中心立法の原則を定めていることである。

②国会が立法を行うにあたっては、他の国家機関の助力を受けず、その関与や介入を排除し、国会が単独で法律を制定できること、すなわち立法の手続において国会の自律を認める国会単独立法の原則を定めていることである。


2 「立法」の意義

・では41条の「立法」とは具体的には何を意味するかである。

⇒この点、立法を形式的意味で捉え、国法の一形式である「法律」を定めることであるとする見解があるが、これは当然のこと妥当ではない。

国会の立法権は、国会の議決によって成立する「法律」と名のついた法規を制定することに限られ、その他の名の法規であれば他の機関が自由に制定できるとすれば、国会の権限を定めた41条は名目的な機能を有するに過ぎないことになり解釈として妥当ではない。


そこで、「立法」の意義は実質的に、かつ広く解釈すべきであるとする。

⇒国会の権限が及ぶ法規とは、一般的抽象的な法規範すべてを含むと考えられており、また、直接間接に国民を拘束し、または国民に負担を課する法規範を制定することはすべて「立法」行為にあたると考えるのである。

この点を踏まえると、一般的抽象的法規範と解すべき憲法41条の意味合いからも、憲法改正に限界を設けることも、憲法の最高法規性を維持する上で最重要なる意味をもつのである。


かいひろし法律の部屋

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