憲法条文整理 第7条

※久しぶりの投稿です。この頃はエクセルを活用してノートを作成して復習を兼ねて勉強しているという感じです。

今日は(天皇の国事行為)をテーマにしてお伝えします。

第7条【天皇の国事行為】

天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行う。

① 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。

② 国会を召集すること。

③ 衆議院を解散すること。

④ 国会議員の総選挙の施行を公示すること。

⑤ 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。

⑥ 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。

⑦ 栄典を授与すること。

⑧ 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。

⑨ 外国の大使及び公使を接受すること。

⑩ 儀式を行ふこと。


重要度4

解説等:メモ書き

○趣旨

・この条文には10個の「天皇の国事行為」が定められている。 

まずは、一つ一つ見ていきます。


・1号の 「 公布 」 とは、広く国民に知らせることをいい。公布は、官報をもって行われ、 公布によって国法として施行されることである。

※判例も官報による公布を正式は方法として認めている(最判昭32.12.28)

○公布による法令施行の時期

※「官報により公布があったとされるのは、一般国民の中の誰かが、その官報を見うるに至った最初の時点である」とされる。

(最大判昭33.10.15)

【参考】

⇒憲法改正の公布は、改正で取り沙汰されている「憲法第96条」に規定されている。

※法律の公布は、国会法第66条において、「奏上の日から30日以内」に公布しなければならないと規定されていること。

※政令・条約の公布は、特に規定がなく天皇の権能とされている。期日や方式は、内閣が決定し、「内閣の助言と承認により天皇が公布」するとある。

 

・2号の 「 国会の召集 」 は、一定期間に、「議員を集めて国会を開始」させる行為のことをいう。


 

・3号の 「 解散 」 とは、議員全員に対し、その任期の満了前に、議員の資格を失わせる行為である。 衆議院が内閣不信任案を可決し、衆議院が解散する場合などがあります。

【参考】

※現在の憲法では、解散権が誰にあるのか明記されていないが、第7条第3号・第54条・第69条の規定から、「解散権は内閣ではなく、天皇に認めていると考えられる。」しかし、天皇の国事行為には、「内閣の助言と承認が必要」であるため、実質的な決定権は内閣にあるといえるのである。

 

・4号の 「 総選挙 」 とは、衆議院の任期満了、解散による総選挙と、 参議院の3年ごとの半数改選 ( 憲法46条 ) による通常選挙のことをいう。

【参考】

※この4号では、「国会議員の総選挙」と規定されているため、本号の総選挙には、衆議院議員総選挙だけではなく、参議院議員通常選挙も含まれると解されている。

 

・5号の 「 任免 」 とは、 「 任命 」 と 「 罷免 」 のことをいう。「 認証 」 とは、 

一定の行為が権限のある機関によって正当な手続きでなされたことを証明する国家機関の行為」をいいます。 ただし、認証自体は効力発生の要件ではなく、 認証を欠いたからといって、その行為が当然に無効になるわけではないということになる。

【参考】

※この第5号の規定には、国務大臣、最高裁判所判事、副大臣、検事総長、大使、公使、宮内庁長官、侍従長、公正取引委員会委員長などがあり、これらを認証官とも呼ばれる。


・6号の 「 恩赦 」 とは、訴訟法上の手続きによらずに、刑罰権の全部または一部を消滅させる行為をいう。これには 「 大赦 」 「 特赦 」 「 減刑 」 「 刑の執行の免除 」 「 復権 」 の5種類が定められています。  

「 復権 」 とは、交通違反などで免許を取り消された者など、 法律の定めるところにより資格を失ったり、停止されている者に対し、その権利の回復を行うことをいう。

※恩赦には、法の適用や裁判の後に生じた社会事情の変化による不都合を解消したりする効果があるとされている。

⇒ちなみに日本に恩赦という制度が伝わるのは、大化の改新のころ

【参考】

※恩赦とは、刑罰の全部または一部を免除したりするようなことであり、これは恩赦法に規定されている。

 

・7号の 「 栄典 」 とは、国家等に功労があった者の栄誉を表彰するため、特定人に対して認められる特殊な地位をいう。 

⇒文化勲章や紫綬褒章などがその例として挙げられているが、実質的な決定権者は内閣であり、政令によってなされているのが現状である。  

※なお、 この「 栄典 」 を国事行為に限定するものではなく、 国民栄誉賞や内閣総理大臣賞などはこの規定に違反するものではないとされる。

【参考】

※国家や公共に対する勲功・功労を表彰して国から授けられる記章である。以下のようなものがある。勲章を与えることを、叙勲(じょくん)という。

・大勲位菊花章(大勲位菊花章頸飾、大勲位菊花大綬章)

・桐花大綬章

・旭日章

・瑞宝章

・宝冠章

昭和12年(1937)に文化勲章が設けられている。

なお、武功に対して与えられた金鵄(きんし)勲章は昭和22年(1947)に廃止されている。

 

・8号の 「 批准 」 とは、全権大使などによってすでに調印された条約に対して同意を与え、 その効力を確定させる行為をいう。 

⇒実質的には、内閣が審査をして確定される。 天皇は、この批准書に署名と捺印をして認証をすることになります。5号と同様、認証自体は効力の発生要件ではない。

【参考】

※政府代表が署名を行った後に、議会が否決した場合、批准は行われない。

議会による承認の手続を行った後、批准書を作成することになる。

⇒そして、作成された批准書は、天皇により認証されることとなる。

※このように、批准は手続きに時間がかかるため、近年では、批准に代えて、天皇による認証を要しない受諾の手続によって条約を締結することも多い。

(例)京都議定書、たばこ規制枠組条約などがこれである。

 

・9号の 「 接受 」 とは、外交使節に対して、接受国として反対のない旨の意思表示を与え、 その信任状を受ける行為をいう。

【参考】

①大使

※最上級の外交使節のことであり、正式には特命全権大使といわれる。

⇒派遣先の国に駐在して派遣元の国を代表し、派遣先の国との外交交渉や、派遣先国における派遣元国民の保護などを行う。

②公使

※大使に次ぐ外交使節のことであり、正式には特命全権公使といわれる。

⇒信任状を持ち国家を代表して他国に派遣され、その地位・職務・特権などは大使とほぼ同じ意味を持つ。

最近では単に外交使節団の一員として、文化交流、通商など専門分野において大使を補佐するために派遣される例も多いのが現状である。

 

・10号の 「 儀式 」 とは、天皇が主宰して執行する国家的な性格を有する儀式をいう。即位の礼や、大喪の礼などの行事が代表的なものとして挙げられる。







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