民法のお勉強 物権編 第5日

※物権の変動

1 物権の変動を目的とする意思表示

(1)物権変動の原因

 物権の変動とは、物権の得喪変更でおきる。それらを表記すると…。

 ①時効(162条、163条、167条2項)

 ②混同(179条)

 ③無主物の帰属(239条)

 ④遺失物の拾得(240条)

 ⑤埋蔵物の発見(241条)

 ⑥付合・混和・加工(242条以下)

 ⑦相続


1、不動産物権変動の原因には、売買だけではなく,各種の原因がある。

⇒実際に、不動産取引を見るとと、売買により不動産の所有権が移転する場合のほかに次の物権の変動もある。

①詐欺による意思表示の取消しによる所有権が移転(復帰)する場合

②契約解除により所有権が移転(復帰)する場合

③時効により所有権が移転する場合

④相続により所有権が移転する場合

2、不動産物権変動の第三者への対抗要件は登記である場合、それらの物権変動を第三者に対抗(主張)するには、どの場合に登記が必要であり、どの場合に登記が必要ではないの化を知る必要もある。


(2)物権変動における意思主義の原則とは

※近代民法における意思主義と形式主義

①意思主義=契約(債権行為)によって物権変動が生じるときは、形式(登記・引渡し)は不要とされる。

⇒当事者の意思の尊重・取引の迅速化をはかり、所有権に対する封建的拘束の 打破、引渡済条項の慣用(フランスの例)である


②形式主義=物権変動には当事者の合意だけでは足りず形式(登記・引渡し)が必要とされるもの。

⇒画一的な公示による取引の安全の確保を重視する。


1、意思主義とは物権変動は当事者間の合意のみによって生ずるとする立法上の立場をいう。これに対し形式主義とは当事者の合意のほかに何らかの形式を要求するとする立法上の立場をいう。

⇒民法176条は「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」と意思主義を採用している。

2、なお、意思主義の下でも例外的に所有権移転等の物権変動が契約成立時に生じない場合もある。

①当事者間に特約がある場合

②不特定物売買で特定がなされていない場合

③他人物売買の場合

がある点に注意を要する。


(3)物権行為の独自性

※先ほど記した形式主義の下では、売買契約だけでは所有権が移転せずに、一定の形式をともなった行為がなされることによって、はじめて所有権が移転する。

⇒物権変動を生ずるには、債権行為とは別に物権行為が必要とされる。これを「物権行為の独自性」と呼んでいる。

※176条「当事者の意思表示のみによって」の「意思表示」が何を指すのかが問題となる。


(ア)独自性肯定説と否定説

物権行為の独自性について

①独自性肯定説:176条の意思表示=物権行為上の物権的意思表示とする。

※判例は物権行為に独自性はないとする物権行為の独自性否定説にたっている。

⇒売買契約の締結によって債権債務が発生して所有権も当然に移転するので、所有権のみを移転させる物権行為は必ずしも必要ではないとするもの。

・ただし、物権契約の独自性を完全に否定して排除しているわけではないので注意が必要である。

⇒意思主義の下でも例外的に所有権移転等の物権変動が契約成立時に生じない場合参照。


②独自性否定説:176条の意思表示=債権的意思表示(契約など)を必要とするもの。

※売買契約のような債権契約において、所有権の移転という物権変動を発生させるには常に独自の物権行為を必要とする考え方を物権行為の「独自性肯定説」と呼んでいる。

⇒この物権行為というのは、登記や引渡しがあったときに行われると解されているので、 結果的に形式主義と似た意味になる。


(4)物権行為の無因性

※物権行為の無因性とは、物権行為においては債権行為が無効になったとしても物権行為の効力は無効とはならないとする考え方である。

⇒これはドイツで採用されている。

・日本の通説・判例は物権行為独自性否定説に立っているが、物権行為独自性否定説からは物権行為の無因性の問題を生じないものと解されており、物権行為の無因性を肯定することは法解釈の点で難があるとして、日本では物権行為は有因であるとする物権行為無因性否定説が通説。

⇒ただ、当事者間の特約により物権的意思表示が別個に切り離されている場合の扱いについては物権行為無因性否定説の中で議論がある。


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