民法(総論)のお勉強 17日目

※ながいです。


第五章 法律行為
第1節 総説(C)

1 法律行為の意義

・権利と義務は一定の事実を原因として発生・変更・消滅するのであるから、民法も、一般に一定の事実(法律要件)があれば一定の権利・義務の変動(法律効果)が発生する。

⇒近代法にとって最も重要な機能を営む法律要件は、売買・賃貸借等の契約を代表格とする法律行為である。

・法律要件は、さらにそれを組成する個々の要素(法律事実)に分析することができる。

⇒その中で最も重要なのが、何らかの法律効果の生ずることを欲して、それを外部に表示する行為たる意思表示である。


2 法律行為自由の原則

(1)私的自治の原則

1、私人の法律関係は、その自由な意思に基づいてなされるべきだという考え方を"私的自治の原則"という。

⇒これは、私人間の経済活動などに公人や公的機関は介入すべきではないとし、私人個々の、自己責任による自由な意思決定を意味する。時代の変化により修正が見れる。


【前提】

※"民法"という法律自体が守るべき基本的な原則が、

(1)個人の平等性、

(2)私的自治の原則、

(3)私有財産制、

(4)過失責任主義である。


※私的自治の原則に含まれる原則

①契約自由の原則

※"私的自治の原則"によって保障された法律行為、ことに経済活動の多くは契約によるからに、この原則には"契約自由の原則"も含まれる。

・契約締結の自由…契約をするかしないかを自由に決められる

・相手方選択の自由…契約の相手方を自由に決められる

・契約内容の自由…契約の内容を自由に決められる

・契約方法の自由…契約の方式を自由に決められる

②団体結社の自由

※個人は集まり、団体となって経済活動もする。よって私的自治の原則には団体結社の自由もこれに含まれる。

③遺言の自由

※死後における財産の処分の内容について、原則として遺言によって自由に定めることができるとする"遺言の自由"も含まれる。

④過失責任の原則 / 過失責任主義

1、他人に損害を与えたとき、その損害が故意または過失という帰責性(=わざとまたは不注意という責める点)がなければ、加害者が責任を負わないとする考え方を"過失責任主義"という。

⇒過失とは一般人に期待される程度の注意を怠ったことを意味する。

2、ただし、被害者保護の観点から一定の修正もみられる。"報償責任"や"危険責任"の考え方から、加害者に故意や過失がなくても損害賠償責任を負うべきとする"無過失責任"を採用する法律・条文もある。(例:製造物責任法)


※"私的自治の原則"の例外:私権の制限

1、人は本来"私的自治の原則"により自由に法律行為をすることができるが、あまりに自由すぎると弊害もあり、私権を制限する必要もでてくる。

それは民法1条に3つ示されている

・・・・・

第1条(基本原則)

1、私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2、権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3、権利の濫用は、これを許さない。

・・・・・

※1条や公序良俗に関する90条のように、抽象的な基準しか定められていない条文を一般条項という


①公共の福祉

・1条1項では、私権という権利そのものが、公共の福祉、つまり社会一般の利益に反するものであってはならないとしている。

⇒憲法13条でも

「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」という規定がある。


②信義誠実の原則

・1条2項にあるように、相手方の信頼を裏切ることのないよう誠実に行動すべきであるという原則を「信義誠実の原則」または信義則という。

この考え方は、多くの派生原理をうみ、それぞれの原理が自由な私権行使を制限する。


③権利濫用の禁止

・1条3項にもあるとおり、権利をむやみに濫用してはいけないという考え方を「権利濫用の禁止」という。

⇒権利を主張することが一見正当にみえることでも、社会的にみて許容できないような場合に、この法理が適用される。


2 法律行為の分類

(1)単独行為・契約・合同行為

・単独行為

※1個の意思表示を要素とする法律行為。遺言、取消し、解除などである。

・契約

※複数の相対立する意思表示の合致を要素とする法律行為。

日本の民法典では贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用(雇傭)、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解を典型契約として定める。ただし、このうち民法上の組合については双務契約説と合同行為説が対立している。

・合同行為

※目的を同じくし相対立しない複数の意思表示の合致を要素とする法律行為。

⇒社団法人の設立行為などであり、今日の通説は合同行為を別に類型化する。


(2)要式行為・不要式行為

・不要式行為

1、法律行為の成立に、一定の形式を要求しないものを"不要式行為"という。

⇒契約についての場合は"不要式契約"と呼ぶ。多くの契約は、意思の合致を成立要件とし、形式を要求しない。

2、"口約束"も、当事者の意思が合致している限り、書面に記載せずとも契約として成立する。

⇒ただし、口約束をしたと証明できなければ履行を強制できないので、"たしかに約束を交わした"という意味で書面を作成することが多い。


・要式行為

1、不要式行為とは反対の概念で、法律行為の成立に何らかの形式を要求するものを要式行為という。

⇒保証契約や、婚姻、養子縁組などがこれに該当し、意思表示のみでは成立しないものである。


(3)その他の分類

①物権行為・準物権行為・債権行為

・物権行為

※物権変動を生じさせる法律行為

⇒物権の設定・移転を直接の内容とする法律行為である。

・準物権行為

※準物権変動を生じさせる法律行為

・債権行為

※債権・債務の関係を生じさせる法律行為

⇒債権上の効果を発生または消滅させる法律行為である。


②財産行為・身分行為

・財産行為⇒財産上の法律効果を生ずる法律行為

・身分行為⇒身分上の法律効果を生ずる法律行為


③有因行為・無因行為

・有因行為⇒原因が欠け原因行為が無効であれば法律行為も無効となる法律行為

・無因行為⇒原因が欠け原因行為が無効であっても法律行為は独立して有効とされる法律行為


④生前行為・死後行為

・死後行為⇒死後に法律効果を生ずる法律行為

(遺言、死因贈与など)

・生前行為⇒生前に法律効果を生ずる法律行為


⑤独立行為・補助行為

・独立行為

※それだけで成立しうる法律行為。

・補助行為

※それだけでは成立しない法律行為。


【参照:他レポート追記】

1 法律行為総論

① 法律行為とは何か

・一定の事実が生じると、その結果、権利が発生したり、消滅したりする。

⇒この権利の発生・消滅原因である事実を法律要件、結果としての権利の発生・消滅を法律効果という。


これから説明する法律行為は、事件や違法行為などと並ぶ、法律要件の一種である。

・法律行為とは、意思表示の内容どおりの法律効果を発生させる法律要件のことをいう。

一定の法律効果の発生を意欲する意思を表示することにより、その欲したとおりの効果が生じる。

⇒たとえば、ある物を「売りたい」「買いたい」という意思表示があれば、それにもとづいて代金請求権と目的物引渡請求権が発生する。

※法律行為の特徴は、意思表示を不可欠の要素とする点にあり、この点で他の法律要件とは異なる。

・ふつう単に、「法律行為」という場合には、後述する契約のことを想定していることがほとんどである。したがって、法律行為≒契約と考えてよい。


1-1 各種の権利変動原因

・権利変動原因には、各種のものがある。

 契約、契約解除、遺贈、相続、不法行為、物の滅失などがその例である。


② 法律行為は意思表示を要素に含む権利変動原因である

1-1 法律行為は意思表示を要素に含む権利変動原因である

※法律行為…意思表示を含む権利変動原因である

…抽象的統括概念

…法律要件の一種

・意思表示を含む権利変動原因…契約・契約解除・遺贈など。

※(法律行為は意思表示以外の要素も必要な場合がある)

(契約の場合は当事者の意思表示+合意)

・法律行為は個別具体的な権利変動原因ではない

 意思表示でまとめられる権利変動原因の統括概念


1-2 法律行為は意思表示以外の要素を必要とすることもある

※法律行為の定義(新設)

・意思表示に基づいてその効力を生じる

 (意思表示が不可欠の要素)

・意思表示以外の要件

(1)法令の規定に従うこと

(2)契約の他、単独行為も含まれる


③ 法律行為は意思表示を要素に含む権利変動の統括概念である

・権利の発生や変更・消滅などの権利変動の原因の一つであり、意思表示を要素とするものを抽象的にまとめて表す概念である。

(契約、その解除、遺贈、相続など)


④ 法律行為は意思表示を要素とする法律要件である

※法律要件としての法律行為

・ある法律効果を得ようとする意思表示(法律事実)に基づいてなされた私法上の権利・義務を発生させる行為を法律行為という。

※法律効果を生む法律要件のうち、最も重要なものがこの"法律行為"である。

※この"法律行為"は、法律事実である意思表示の様態や方式によっていくつかに分類できる


2 「法律行為」概念の存在意義

・法律行為は一個または数個の意思表示を不可欠の法律要素とするが、講学上は、意思表示の結合の態様によって、

単独行為、契約、合同行為以下の下位概念に分けるのが伝統的通説である。

民法はこれらに共通する規定を「第1編 総則 第5章 法律行為」に設けている。

・私人の間の権利義務関係(法律関係)の変動(発生・変更・消滅=法律効果)の原因となるものを法律要件というが、(一定の法律効果を希望する)意思の表示を内容とする法律行為はそのもっとも重要なものである(他の法律要件としては、不法行為や時効などがある)。

※近代市民社会の個人主義・自由主義の下では、私法上の法律関係は各人の自由な意思に基づく法律行為によって規律させることが原則である(法律行為自由の原則)。

法律行為は言うなれば当事者間に適用される私的な法律を当事者の意思によって制定・改廃する私的な立法作用のようなものである。


① 私的自冶

・私人の法律関係は、その自由な意思に基づいてなされるべきだという考え方を"私的自治の原則"という。民法の三大原則の一つである。

私人間の経済活動などに公人や公的機関は介入すべきではないとし、

私人個々の自己責任による自由な意思決定を意味する。ただし、この原則も多分に修正されている。

※"私人"とは、一般的には公務員などの公の立場にいない者をさす


② 法律行為概念の存在意義

・私的自治の原則のもと、人は原則として、自由に法律行為により法律効果を発生させる(つまり、自由に法律関係を形成する)ことができます。

※これを私的自治の原則のコロラリーとしての「法律行為自由の原則」といいます。

・そして、この「法律行為自由の原則」から、さらに「契約自由の原則」が導き出され、近代資本主義発達の原動力となりました。

※しかし、このことは、逆に言えば、「法律行為」という概念装置を設け、これにより誰でも自由に法律関係を発生させることができると理論構成することで、私的自治の原則という私法上の基本原則が実現できた、ということになる。


3 法律行為の分類

※契約、単独行為、合同行為

・契約…対立する複数の意思表示が合致して成立

 ※契約自由の原則…当事者が対等な関係で自主的に調整できる→法が積極的に介入する必要はない(私的自治の原則との関係)

・単独行為…ひとつの意思表示で成立

 (相手のある単独行為と相手のない単独行為)

 ※単独行為自由原則の不存在…相手が法律関係を一方的に押し付けられるため

・合同行為…複数の同じ方向性の意思表示が合意して成立

(契約との違いは意思の方向と効力否定の場合の取り扱い)

※意思表示効力否定

一人のために他の多数の人が法律関係を押し付けられるため


4 法律行為の構造

権利義務の存否→権利変動原因の有無

共通点:意思表示 個別によって規定が違う

→意思表示を考える

成立した法律行為の効力否定

 取消し・無効←脅迫etc(総則による規定)

法律行為特殊実行方法

 代理:法律行為全般について可能(総則による規定)


第二節 法律行為の解釈(C)

1 法律行為解釈の任務

※法律行為を解釈する基準とは

1、法律行為についてなにか紛争があった場合などに、法律行為の内容を明確にする作業を"法律行為の解釈"という。意思表示の合致等を経て契約等が成立したが、当事者間の契約で決めていなかった内容などはどう解釈すべきか。その基準には、以下のようなものがある。


①当事者の真意の尊重

1、当事者が用いた契約の文字や、印刷された契約の文言が、真に当事者を拘束すべきではないとし、当事者がどのような意図をもって意思表示をしたかを尊重する(例文解釈・判例)


②任意法規(任意規定)による補充(91条)

1、当事者の意思が不明確なときにそれを補充するための規定を"任意法規"(任意規定)という。

⇒ただし"私的自治の原則"という民法の大原則があるため、任意規定よりも当事者の意思の方が尊重される。なお、任意規定の反対概念は、強行規定である。

・・・・・

第91条(任意規定と異なる意思表示)

法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

・・・・・

※私的自治の原則

1、私人の法律関係は、その自由な意思に基づいてなされるべきだという考え方を私的自治の原則という。

契約自由の原則や団体結社の自由など、国家や法には強制されない自由な意思による経済活動を保障する。

※事実たる慣習(92条)

1、法律行為の解釈の基準となる習慣を「事実たる慣習」と呼ぶが、この慣習は任意規定に優先する。なお、慣習法とは、区別される。

・・・・・

2 任意規定と異なる慣習(事実たる慣習)

第92条(任意規定と異なる慣習)

法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。

・・・・・

1、慣習が適用されるには、その慣習が公の秩序に関しないもので、当事者が反対の意思表示をしていない必要がある。当事者が、慣習の存在を知っている必要はないとされる(不要説・有力説)

2、「民法とは」で記したが、慣習は民法の法源となる。

※条理と信義則による解釈

※"相手の期待を裏切らないように信義に沿って誠実に行動すべし"という信義誠実の原則が、法律行為の解釈の基準に用いられる場合もある。


4 条理(信義誠実の原則)

(1)条理の意義

※信義誠実の原則・信義則の位置づけ

1、民法の原則のひとつである"私的自治の原則"によって、我々は原則として自由に法律行為を行うことができる。

2、民法の三大原則:権利能力平等の原則・私的自治の原則・所有権絶対の原則。

3、しかし、他者とのかかわりがある以上、私権をまったく自由・無制限に行使できるとなると不都合が生じる。民法1条には"基本原則"として、私権の性質や私権を行使する際についての制限を明記している。すなわち、以下の三つである。

・公共の福祉

・信義誠実の原則

・権利濫用の禁止

※信義誠実の原則・信義則とは

1、1条2項にあるように、相手方の信頼を裏切ることのないよう誠実に行動すべきであるという原則を「信義誠実の原則」または信義則という。"私的自治の原則"で保障された人の自由な法律行為について、「いや、でも相手の信頼を裏切ってはいけない。誠実にしなければいけない」という制約を課している。

・・・・・

民1条(基本原則)

1、私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2、権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3、権利の濫用は、これを許さない。

・・・・・

※民事訴訟法第2条にも「(前略)当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない」とある。

※信義誠実の原則・信義則の適用事例(関連判例)

※契約の義務について

1、「売主側が、買主側の要求により、履行の準備に相当の努力を費した場合には信義則上も買主の引取義務を肯定すべきである」とし、契約における義務について、信義則が適用された事例

(「損害賠償等請求(最判昭46.12.16)」

※債務の履行について

1、わずかな不足しかない弁済の提供を無効にすることは、取引社会の信義誠実の原則に反する、と判示。

(大判昭13.6.11)

※解除権の行使について

・無断でされた譲渡や転貸を原因として賃貸借権の解除を求めることは信義則に反すると判示。

(最判昭28.9.25等)

信義誠実の原則・信義則の権能

※信義誠実の原則は、判例によると、具体的には以下のような機能を果たす。

⇒つまり、法や契約内容を調整するひとつの補充的な手段となる。

・法律や契約内容を解釈する基準になる(最判昭32.7.5等)

・当事者の利益の調整する

・法律に規定がない部分を補完する

信義誠実の原則・信義則から派生する原理

1、「信頼に沿って、誠実に」というこの原則は、非常に幅広く捉えられる法理であり、以下のようなさまざまな法理・考え方を派生させ、私権を制限する。

・禁反言の原則(エストッぺル)

・クリーンハンズの原則

・事情変更の原則

・権利失効の原則

・契約締結上の過失


かいひろし法律の部屋

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