行政法のお勉強 第9日

※行政罰

(1)意義

・行政罰とは、行政上の義務違反行為に対して課される罰則をいい、行政刑罰と行政上の秩序罰とに大別される。

⇒行政罰は公務員関係等、公法上の特別の関係にある義務違反に対する制裁である「懲戒罰」とは区別されている。また執行罰が義務の履行を強制するための手段であるのに対して、行政罰は、過去の義務違反に対する制裁の意味を持つ。

しかし、行政罰も、あらかじめ法律をもって義務違反に対する制裁予告をすることにより、間接的に義務を履行を強制する効果を持つ。


(2)行政刑罰

※意義と特色

行政刑罰とは、行政罰のうち、その原因となる行為が犯罪に該当するときに、科される刑罰(死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料)をいう。

⇒行政刑罰は、刑事訴訟法の定めるところにより、検察官の起訴を受けた裁判所の判決により科されることになる。


(3)秩序罰

秩序罰とは、行政上の秩序を維持するための罰として、行政法規違反に過料を科すものをいい、加えられる罰が刑法の刑名が無いもので、比較的軽微な過料であるものをいう。

⇒行政上の秩序罰を科す場合にも、法律の根拠は必要である。


(4)その他の罰との関係

①懲戒罰と行政罰

行政罰は、一般権力関係において一般統治権に基づいて科されるのに対し、懲戒罰は、特別権力関係において秩序を乱した者に科される。

⇒懲戒罰は、公務員関係の秩序維持のために公務員の個別の行為に対する制裁であり、行政罰とは目的が異なるので両者は併科できることになる。

②執行罰と行政罰

執行罰は将来の義務履行違反に対して過料を科して履行を促すものであり、行政罰は過去の義務履行違反に対して過料を科して制裁を加えるものである。

⇒行政上の強制執行と行政罰は別個の目的を持つ制度であるので、同一の違反行為に対して両者を重ねて適用できる。

③秩序罰と刑罰

行政刑罰も秩序罰も、行政上の義務違反に対する制裁であるが、行政刑罰には刑法が適用されるのに対し、秩序罰には刑法の適用がない。

⇒秩序罰と刑罰の関係は、秩序罰としての過料と刑罰としての罰金、拘留とを併科しても、憲法31条、39条後段に違反しない(最判昭36.6.5)


【行政刑罰と秩序罰を比較する】

1 行政刑罰 

 [罰の内容] 刑罰(懲役、禁錮、罰金、拘留、科料)

 [刑法総則の適用] 適用あり

 [手続き] 裁判所が刑事訴訟法の定めに従い科す


2 秩序罰

 [罰の内容] 過料 (刑罰ではない)

 [刑法総則の適用] 適用なし

 [手続き] 

 ・法律に基づく過料は、裁判所が非訟事件手続き法のよって科す

 ・条例、規則違反に対する過料は、地方公共団体の長が行政行為の形式で科す

 ⇒納付のない場合は、地方税の滞納処分の例により徴収する。



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