民法のお勉強 物権編 第3日

7  物権の種類

(1)物権法定主義

・物権の種類と内容は法律によって定められており、法律で定められたもの以外の物権を新たに創設することはできないとする法の原則を「物権法定主義」という。

⇒民法175条、民法施行法35条に規定されている。

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民法175条

物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。

【解説】

契約等により、民法その他の法律の定めたもの以外の新たな物権を作り出すことはできないというもの。また、物権の内容の中身を民法その他の法律に定められている物権とは違ったものとすることもできない。


・古くは、「物権法定主義」は、封建的権利を廃止して、個人の所有権の自由を確保するために制定されたものと説明されてきている。今日では、物権は債権に優先する効力を有し、また制度上債権以上の保護を与えられているために、各人が自由に物権を創出し得るとすると法制度の混乱を招くおそれがあるために、このような原則が設けられていると説明される。

⇒法律に規定のない物権を設定する契約が結ばれても、「物権法定主義」により、そのような物権は発生しないが、当事者間においては債権的な契約として有効である。

※物権法定主義にいう「法」は、民法に限られず、鉱業法や漁業法などによって規定されている物権もある。また、商法には商行為の性質から民法上の物権とは内容が幾分異なる物権(商事留置権など)が規定されている。


(2)民法以外の物権

①鉱業権(鉱業法5条・12条)

②租鉱権(鉱業法6条・71条)

③採石権(採石法4条)

④漁業権(漁業法6条・23条)

⑤入漁権(漁業法7条・43条)


※商法

①留置権(商法51条・521条・562条・753条等)

②質権(商法515条)

③先取特権(商法295条・810条・842条等)

④抵当権(商法848条)

※民法とは、異なる内容のものを認めている。


(3)慣習法による物権 ~判例の認めたもの

①湯口権(温泉専用権「温泉権」)

②水利権(水田などの流水利用権)

③譲渡担保権


【判例】

※また、「物権法定主義」を補完するものとして、「慣習による物権的な性質を持つ権利」も判例により認められている。

⇒その例として温泉権(大判昭和15年9月18日)と流水利用権(大判大正6年2月6日)がある。ただし、強行法規である民法施行法35条では、「慣習上物権ト認メタル権利ニシテ民法施行前ニ発生シタルモノト雖モ其施行ノ後ハ民法其他ノ法律ニ定ムルモノニ非サレハ物権タル効力ヲ有セス」として、慣習上の物権を認めていないことから、慣習法上の物権を認め得るかが学説上の大きな論点となっている。


・現在の多数説は、同条(民法施行法35条)も、慣熟した慣習によってその後に生ずる物権を否認するものと見る必要はないとして、温泉権や水流利用権の存在を認めている。下級審の判例によると、背信的悪意者による債権侵害に対し、信義則違反と不法行為を理由として、物権的請求を認めたものがあり、「慣習による物権的な性質を持つ権利」の解釈の一つとされているのが事実である。


(4)制限物権と他物権

※制限物権

・制限物権とは、特定の目的のためだけに認められる、その物を使用収益できる権利である。これは用益物権と担保物権のふたつに分かれる。

・占有権を除いて、他の物権のうち、所有権とその他の用益物権および担保物権の間には、いわば質的な差異がある。

⇒所有権は目的物の全面的な支配権であり、万能的な内容を有する権利であるのに対して、他の七つの権利は目的物の一面的な支配権であり、使用価値ないし交換価値の一部分だけをその内容とするところがある。

※つまり所有権以外の権利は、いずれもある特定の利用方法だけを内容とするものであり、そこで、これらの権利は所有者にたいして、「制限物権」といわれるようになった。


・民法の物権法においては、物権は、「物を支配する力」の大きい順番に、占有権、所有権、制限物権に分けられる。さらに制限物権は、用益物権と担保物権に分けられる。

⇒用益物権の代表は、地上権、永小作権など。また、担保物権には、抵当権、質権などが含まれる。


※他物権

・制限物権は、他物権ともいわれている。その理由は、所有権は万能な権利であるから、所有権は自分の所有する物であり、たとえば土地を自分で利用したり、もしくは売却して、その利用価値もしくは交換価値を実現することは自由とするから、その上に地上権や抵当権という制限物権を持つ必要がないことになる。

⇒これを逆に言えば、制限物権は原則として他人の所有物の上にだけ成立することになる。ようするに、他人の所有物の上の物権という意味において他物権と呼ばれるのである。

※もっとも、事情により、所有者が自分の所有物の上に制限物権を有するという状態が生じることがある(後述)。したがって、制限物権と他物権は同じではないといえる。


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