民法のお勉強 物権編 第1日

1 物権の変動

・物権変動とは、物権の発生・変更・消滅、物権の取得・喪失・変更をいう。

・物権変動の原因は、法律行為である。

・意思主義。意思表示のみで物権変動を生じる(176条)。

(⇔形式主義 (登記や引渡が必要である))


1-1 物権変動の公示方法

①不動産物権変動は「登記」である。

②動産物権変動は「引渡」である。


(1)公示の原則

・公示の原則というのは、物権に関する基本原則で、物権の変動は常に外部から認識できるよう一定の表象がなされなければならないという原則のこと。

(2)交信の原則

・公信の原則というのは、物権に関する基本原則で、外形的表象を信頼して取引した者は、たとえ表象が真実と一致しない場合でも、その表象どおりの権利が認められるという原則のこと。

 

1-2 公示方法は?

・公示方法は、不動産では登記、動産では占有です。

※また、物権の得喪変更を第三者に対抗するためには、不動産は登記、動産は引渡しを必要としている。ただし、不動産でも借地権については特例があり、具体的には、農地、建物の賃借権は引渡しを、動産でも航空機、自動車などは「登録」を公示方法としてします。

⇒なお、公信の原則は動産のみに適用され、不動産には適用がありません。


2 物権的支配の秩序維持(占有権)

※占有権とは、物を支配する権利のことである(民法第180条)。

⇒土地の所有者は、その土地を所持しているので、「占有権」を有している。

また土地の賃借人は、その土地を使用する権限があるので、やはり占有権を有している。

※そうすると占有権という権利を考えなくても、所有権や土地賃借権だけに着目すればよいと考えられるが、あえて占有権という権利を想定するにはそれなりの理由があるのです。


2-1 「占有権」という権利というもの

・例えば、ある者が土地を現実に支配して利用しているが、他の者がその土地の真実の所有者であると主張するような場合には、土地を現実に支配している人はまったくの無権利者である可能性があることになる。

⇒こうした場合には、法律上、現実に支配している人をとりあえず保護することが必要となるので、現実に支配している人に「占有権」という権利があると考えるのである。


2-2 占有での事実状態の保護

※もちろん、民事裁判によって土地を現実に支配している者が、無権利者であることが確定すれば、占有権は最終的には失われることになるのだが、裁判が確定するまでの間は占有権によって事実状態が保護されることになる。

⇒なお、真実の権利者である者が長期間にわたって権利を主張せず、無権利者の占有状態が長期間継続した場合には、無権利者が土地の所有権を取得することが認められている。

この制度を「所有権の取得時効」という。


3 物の全面的支配(所有権)

※所有権は、物を最も完全かつ全面的に支配することのできる物権であり、財産権の中心をなす私権でもある。所有権は、地上権などの制限物権によって、一定の範囲、一時的に制限を受けても、その制限が消滅すれば、当然に完全な支配を回復する(所有権の弾力性)。また、所有権は消滅時効にかからない(所有権の恒久性)。


(1)自由な所有権

1、所有権は物の全面的な支配の形態である。

2、いい変えると、物を思うままに使用・収益・処分できる権利であり(206条)、他の物権のように、耕作するとか、競売をして債権の弁済に充てるというような、ある一面的な内容を有するものではないということ。

3、あらゆる封建的拘束を脱した全面的な支配権たる、いわゆる自由な所有権は実に近代法主義の所産である。

4、近代法主義の個人の自由を中心とする理想は、その主体において個人の自由を認めるとともに、その客体において自由な所有権を認めている。

・・・・・

第206条(所有権の内容)

所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

・・・・・

(2)所有権の作用

1、全面的支配権としての所有権の内容は、いかようにでも利用できるということであるが、実際上は次の二つの面において重要な作用を有する。

2、一つは、他人に貸与して使用料を徴収することであり、二つには、これを担保として金を借りることができる事である。

3、前者にあっては、所有権を持てる者の優位を利用して持たない者を圧倒し、自分に有利な契約を締結することになる。

4、そして現在ひとびとが借家人・借地人・小作人・などの他人の物を利用する立場を特に考えねばならなくなった理由は、ここに意味をなすことになる。

5、つぎに後者であるが、すなわち物を担保にすることにより、経済自体において資本を手に入ることが極めて必要となることに従い、ますます重要な地位を確保するようになる。

6、こうして金融制度は、今日の私法的法律関係の中に最も必要なもののひとつとなる。

⇒所有権はこれを通じて金融資本の支配の下に入る事になり、金融資本の優越と併行して、担保制度に関して民法制定以来最も多くの特別法が設定されている理由はここにあることになる。


4 土地を利用する制度(用益物権)

1、用益物権とは、他人の土地を、ある目的で使用するための権利である。地上権、永小作権、地役権などが、これに当たることになる。

2、物権については、さまざまなものがあるが、まず、最も完全な物権といえば、所有権であり、これは、ものの全部を支配できる権利である。これに対して、ものを一時的、または部分的に支配することのできる権利が制限物権と呼ばれる物権である。

3、この制限物権はまた、担保物件(抵当権、質権など)と、用益物権に分類できる。用益物権の代表である、地上権、永小作権などは、制限物権と言うものの、現在では次第に失われつつあるものである。


※地上権(第265条)

・地上権とは、所有権に次ぐ権利。他人の所有する土地を使用する権利のことであり、借地権のひとつである。

※永小作権

・永小作権とは、小作料を払うことで、他人の土地で耕作または牧畜をすることができるという権利のこと。永小作権の存続期間は、小作人を保護するように、20年以上50年以内と長く、現在ではほとんどこの形で小作契約が結ばれることはなくなっているのが現状である。

※地役権(民法第280条)

・地役権とは、自己の土地の便益のため他人の土地を供し得る物権である。土地がこのような関係にある場合に、自分の土地を要役地といい、他人の土地を承役地という。

⇒要役地と承役地は必ずしも隣接していることを要しない。ここで地役権とは、要役地のために承役地に設定する権利を指していることになる。

※入会権(いりあいけん)

・村落共同体等が、一定の主として山林原野において土地を総有などし、伐木・採草・キノコ狩りのなどの共同利用を行う慣習的な物権であり、民法が定める用益物権のひとつである。

⇒入会権が設定された土地のことを入会地という。入会権を持つ村落共同体を入会団体といい、判例は、入会団体の所有形態を権利能力なき社団と同じ総有であるとしている。

(入会団体の殆どは、権利能力なき社団のうちの、いわゆる「代表者の定めのない権利能力なき社団」である。)。

※入会権は、土地に対するものだけでなく、入会団体の共同所有物や預貯金に対しても認められる。


5 物の担保価値を利用する制度(担保物権)

※担保物権

・担保物権とは、債権者が自らの債権の履行を確保するために、債務者または第三者が所有する財産に対して、優先的に権利行使をすることができる権利のことをいう。

⇒人的担保に比べて価値の変動が少ないために、より確実に債権を回収することができるのが特徴である。

ちなみに、担保物権により担保される債権を、被担保債権という。


(1)各種担保物権の特質

※担保物権の効果

・担保物権者が、その担保物権の目的物を自ら所持することのできるという効力を「留置的効力」という。

⇒例えば、他人の時計を修理した人が持つ、修理代金を支払ってもらうまで自己の管理下に置いて、代金支払を間接的に強制することが出来るという権利である。

※留置権(295条以下)と質権(342条以下)とは、この側面に着眼した制度である。

⇒要するに、債務者の弁済がない場合には、担保物権を売却して弁済にあてることができるろいうものである。


※留置権

・他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権の弁済を受けるときまで、その物を留置することを内容とする担保物権のことをいう。

⇒先取特権と同じ法定担保物権に属するが、先取特権に認められる物上代位性や制度上の優先弁済の効力は留置権には認められない。

※ただし、留置権にも事実上の優先弁済が可能となる場合があるので注意が必要である。

(民法295条以下で規定されている民法上の留置権(民事留置権)のほか、商法に規定されている留置権(商事留置権)もある。)


※質権

・担保物権の一類型であり、民法に規定のある典型担保物権(第342条)である。

⇒債権の担保として質権設定者(債務者または第三者)から受け取った物(質物⇒不動産でも動産でもよい)を質権者(債権者)が占有して、その物について他の債権者を差し置いて優先的に弁済を受けることができる権利である。

※目的としては抵当権と共通するが、しかし、占有の移転が要件となる点で抵当権と異なることになる。

・先取特権(303条以下)と抵当権(369条以下)とは、この制度の手段を中心に組み立てられている。そして、質権は右の目的物を留置して弁済を強制する手段をも兼ね備えているといえるからである。


※先取特権

・法定担保物権の一つであって、一定の類型に属する債権を有する者に付与される意味を持ち、債務者の財産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利をいう(第303条)。


※抵当権

・日本法を含む大陸法系の私法上の概念であり、担保物権の一つである。

⇒質権とは違って引渡しを要しないために所有者が、「抵当権成立後も引き続き使用・収益をすることができる」、というのが通有的な性質である。

※日本民法においては、当事者の合意によって設定される約定担保物権であり、不動産や一定の動産・財団のみをその目的としており、一般財産をその目的とすることはできない。


※法定担保権

・留置権と先取特権のこと。


※約定担保権

・質権と抵当権のこと。当事者間の約定により担保権を設定し、これに対して融資が与えられる事になっている。

かいひろし法律の部屋

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