会社法のお勉強 第8日

※もしかして前回記入したかな…まあいいや復習の意味も兼ねて

(3)会社の政治献金と取締役の忠実義務

1、政治献金は、取締役の会社に対する忠実義務違反にならないかどうかが 問題となる。

⇒最高裁大法廷判決は、取締役が職務上の地位を利用して、 自己または第三者の利益のために政治献金をするならば、忠実義務違反になるとするとした。  

2、そして政治献金をするときは、無制限に認めるものではなく、その会社の規模、経営実績、その他社会的経済地位および寄付の相手方など、諸般 の事情を考慮して合理的な範囲内において金額を決めるべきであるとする。  

3、この範囲を超えた不相応な寄付は、取締役の忠実義務に違反するとして いることである。

⇒学説も多くはこの判決の立場を支持しているが、政治献金は会社の 権利能力の範囲内の行為と認めながら、応分の寄付の判定が困難であること、また、 社会的弊害などを強調して政治献金はすべて忠実義務違反とする説もある。  


【重要判例】  

1、本件は、八幡製鉄株式会社(現在の新日本製鉄)が自民党に政治資金350 万円の寄附をした行為につき、株主が取締役に会社に対して350万円と遅 延損害金を支払うよう株主代表訴訟をした事案である。

⇒そして、

①本件行為が「鉄鋼の製造及び販売並びにこれに附帯する事業」の目的に反するの ではないか、

②また本件行為が忠実義務違反(355条)になるのではない かが争点となった。  

2、地裁では、取引行為と非取引行為という概念に分け、取引行為に関して は「客観的抽象的に目的遂行上必要であり得る行為」が目的の範囲内であるとし、非取引行為については一定の場合を除き、「個々の事業目的が何で あるかを問うまでもなく、当然に凡て事業目的の範囲外の行為と云わなけ ればならない」とした。

⇒忠実義務違反に関しては、非取引行為は原則忠実義務違反になるが、総株主の同意が期待される行為に関しては、例外とし て忠実義務違反を負わないと解して、本件は例外にあたらず、忠実義務違反 を負うと判示したのである。  

3、その後、高裁では、目的の範囲内の行為とは、「定款の記載自体から観察して、 客観的抽象的に目的遂行するに必要であり得べき行為を意味する」とし、「社会に対する関係において有用な行為」は事業目的に有益か否かを問わ ず、「当然にその目的の範囲に属する行為として、これを為す能力を有する」 とした。  

4、忠実義務違反に関しては、「株主の利害との権衡上の考慮に基く合理的な 限度」を超えてなした寄附は忠実義務違反だとしている。

⇒本件では、政治資金 の寄附は、社会に対する関係において有用な行為と認定され目的の範囲内 の行為とし、忠実義務違反に関しては、応分を超えた寄附行為は忠実義務 違反だという旨の主張がなされていないため、裁判所としては判断できな いと判示したのである。  


最高裁の判断(最高裁昭和45年6月24日)

1、以上のような経過を経て、最高裁では、「目的の範囲内の行為とは、」「そ の目的を遂行するうえに直接または間接に必要であれば、すべてこれに包 含するものと解する」とし、本件行為を間接に必要な行為と認定した。

⇒忠実義務違反に関しては、「その会社の規模、経営実績その他社会的経済的地 位および寄附の相手方など諸般の事情を考慮して、合理的な範囲内におい て、その金額等を決すべきであり、右の範囲を越え、不相応な寄附をなす がごときは取締役の忠実義務に違反するというべき」として、本件は合理 的な範囲を越えたものとすることはできないと判示した。  

※なお、この事案には2つの補足意見が出されている。

・多数意見と2つの 補足意見の大きな違いは、「応分」の範囲内か否かを取締役の忠実義務違反 の問題として考えるのか、それとも会社の権利能力の範囲外の行為として 考えるのかという点にある。

(これが会社法の勉強の上では理解の上で大切な意味をもつ)

⇒さらに補足意見では、会社の政治資金の寄附 は、客観的にではなく、具体的に応分の範囲を超えないか判断すべきとす る。 


二 会社の意思能力・行為能力  

1、会社が意思能力・行為能力を有するか否かは、法人本質論と関連する。 


(法人擬制説)

・法人擬制説の立場では、これを否定している。  

2、現在有力な実在説の立場ではこれを一般に肯定している。

⇒すなわち、会社は法人であるので自然人のごとく会社自ら意思を決定することはできな いので、会社の組織において会社の意思を決定し、活動をなす者を会社の 機関として行為をすれば、それが会社の行為と認められる。  

3、なお、会社機関が会社を代表する法律関係は、代理人が本人を代理する 法律行為とは、観念的に異なるものであるが、代理に関する法律上の規定 が、会社機関の代表行為に準用される。 


三 会社の不法行為能力  

1、会社の行為能力を認めたと同様に、会社の不法行為を認める。

⇒要するに会社の不法行為能力について、会社は、会社の代表機関がその職務を行なうにつき、他人に加えた損害を賠償する責に任ずるものとしていることである(350 条・600条参照)。  

2、この規定は、とくに会社に責任を負わした政策的規定ではなく、ただ注意的規定にすぎないと解する。

⇒この場合に、代表機関の行為につい ては、機関としての行為と個人の行為の二面が考えられるから、個人とし ての不法行為責任を負うものと解される。  

3、したがって、会社と代表機関個人とは、不真正連帯債務を負う。

⇒なお、 代表機関以外の使用人などが、会社の事業の執行について不法行為をなし たときは、会社は民法715条による責任を負う。 

・・・・・ 

(参考条文)

※民法  第715条【使用者等の責任】  

1、ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行につい て第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の 選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意 をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。  

2、使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。  

3、前2項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を 妨げない。 

・・・・・ 

四 当事者能力、訴訟能力、公法上の能力  

1、会社は、新訴訟上の当事者能力、すなわち訴訟の原告または被告となる 能力を有することになる(民訴18条)。

⇒訴訟能力、要するに自ら訴訟行為をなし、ま たは受ける能力を有するのである(民訴37条)。

※会社は、訴願権、納税義務のごと き公法上の権利義務を負う。ただし、従来は、一般に刑法上の犯罪能力は 否定されることになる。 

かいひろし法律の部屋

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