憲法のお勉強 第14日

第三章 国民の権利及び義務 つづき

(4)西欧型と旧ソ連型

※西欧型民主政国家の人権宣言の特徴は、自由権を中心とする伝統的な人権が基本とされている点。

⇒これに対して、旧ソビエト社会主義共和国連邦の代表される社会主義国家の人権宣言は、社会権、特に労働権が基本になっていたのが特徴である。

※社会主義の労働権は、西欧型労働権とは性質が異なる。


【参考】

西欧型憲法の労働権 ― 勤労の権利、労働基本権(団結権、団体交渉権、争議権)


※社会主義国家の労働権

① 頑張って働いても給料は同じという特徴。

② 職業選択の自由がない点。


3 法律による保障から憲法による保障へ

(1)法律による保障

 19世紀から20世紀前半 ― 「国民」の権利を保障するものが多いのが特徴。

 ⇒自然権的な人権の観念は、必ずしも採用されなかったといえる。

 ※この時期における人権は、外見的人権であるといわれる。(法律による保障)


(2)憲法による保障(法律による保障)

※第二次世界大戦におけるナチズム・ファシズムの苦い経験によって、初期の人権思想が見直されることになる。

外見的人権 → 自然権思想の復活

⇒(人間が人間であることに基づいて論理必然的に享有する権利)という人権の観念である。

憲法による保障が強調されることになった。

⇒戦後の大きな転換である。


4 国内的保障から国際的保障へ 

A 国内的保障

※人権保障の方式には,大別して 2 種類がある。

(1)国内的保障

①憲法典で基本権として保障されている権利や、

②各種の憲法付属法によって、法律上の権利として保障されているものを対象にして,

③それらの権利が侵害された場合には,国内の機関を通じてこれを保障する、というシステムを意味している。

※この救済の方法としては,①裁判所に訴え出て,裁判で保障してもらうというもの(=司法救済)や,②行政機関による侵害の場合には,当該行政庁や,その監督官庁に異議を申し立てる制度(=行政救済)が存在する。


(2)国際的保障

※これに対して,人権の国際的保障のポイントは

⇒「国際的な機関を通じて人権を保障する」という仕組みを採用している点である。また時にこれと混同されるものに,人権条約の国内的実施という仕組みが存在するが、これは国際的な条約で定められた「人権」の内容を,国内の機関を通じて保障しようとするシステムである。

 人権思想の進展 ― 国内的保障 → 国際的保障


【国際的な文書への具体化】

① 世界人権宣言(1948年) 国際連合総会で採択される。

② 国際人権規約(1966年) 国際連合総会で採択され、1976年に発効している。


【内容】

※本規約の履行を確保するため、締結国は国際連合に対し規約実現のために取った措置などに関する報告義務を負うというものである。


【参考】

①社会権規約

1、この規約では、休日の報酬の支払い(第7条)、ストライキ権(第8条)も含めた労働の権利、到達可能な最高水準の健康(第12条)も含めた社会保障についての権利、中等教育、高等教育の漸進的無償化も含めた教育についての権利などの社会権が保障される。

2、これは世界人権宣言において採択された「経済的・社会的・文化的権利」に相当する。

※社会権規約は、保障されている権利の内容から、規約を批准しても即時的な実施は義務づけられておらず、漸進的な実現が求められているという点があげられる。


②自由権規約

1、この規約では、身体の自由と安全、移動の自由、思想・良心の自由、差別の禁止、法の下の平等などの自由権が保障される。

⇒これは世界人権宣言において想定されている「市民的・政治的権利」にほぼ相当する、いわゆる「自由権規約」である。

2、これには、戦争賛美宣伝及び差別、敵意、暴力を扇動する国民的、人種的、宗教的憎悪の唱道の法律による禁止(第20条)も定められている。

3、また生命への権利を定めた第6条においてはジェノサイド条約について、結社の自由と労働組合の結成、参加権を定めた第22条においては国際労働機関についても規定している。

※自由権規約は、締結国に対し即時実施が義務づけられている。任意的申立て制度も採用されている。


※第1選択議定書

※第1選択議定書では、自由権規約に規定された権利の侵害があった場合、国連が個人の通報を受理・審議する手続きについて定めている。この選択議定書には欧州評議会の全ての加盟国に加え、カナダ、南アメリカ諸国、オーストラリア、ニュージーランドも批准している。


※第2選択議定書(死刑廃止条約)

※第2選択議定書では、死刑廃止を目的とする選択議定書を締結した国の義務、国連に対する個人の通報などを定めている。

 

日本の批准

※重要な人権条約。

 ①難民の地位に関する条約。

 ②女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約。

 ③児童の権利に関する条約。

 ④あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約。

 ⑤拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は刑罰に関する条約。



かいひろし法律の部屋

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