民法のお勉強 総論 第9日

第3章 法人

第1節 法人の設立

1 法人の意義

※法人とは、自然人以外のもので、法律によって権利能力を付与されたものをいう。

⇒この法人には、一定の組織を有する人の集団に、法が権利能力を付与した社団法人と、一定の目的のもとに捧げられた財産の集合に、法が権利能力を付与した財団法人とがある。


2 法人の本質論

(ア)法人擬制説

1、「法人擬制説」とは、法人つまり会社は法律が自然人であるかのように擬制したことによって存在するといった考え方のことをいう。

⇒擬制とは、「本質の異なるものを法律上同一視すること」という意味合いです。

2、要するに、会社を個人の集合体と考える立場であるという考え方。


(イ)法人否定説

1、法人擬制説を発展させたもの。法人という擬制の背後にいかなる実体(真の法的主体)があるのかを解明しようとする考え方。

⇒その解明の結論により、法人の財産が実体であるとする説(目的財産説)、法人の財産を管理する者が実体であるとする説(管理者主体説)、法人の財産によって利益を受ける者が実体であるとする説(受益者主体説)がある。


(ウ)法人実在説

1、法人は独立した社会的存在として現実に存在しているという考え方。

⇒この説では、法人が行為を行なうことは、法人が社会的実体である以上、当然のこととされる。

※法人の行為はまさに法人自身の行為であり、法人の理事は法人の手足に過ぎないと解釈されている。


3 権利能力のない社団・財団

(1)権利能力なき社団

A 意義

※実質的には、法人格のある団体のように活動しているが、法人とはなっていない団体のことを「権利能力なき社団」という。「法人格なき社団」ともいう。

⇒権利能力(法人格)がないため、権利・義務の主体となることは当然にできない。財産を総有しているというのが、判例の見解でもある。

※団体は、法律の要件を満たすことで権利能力(法人格)を取得した「法人」となり、法人名義でさまざまな法律行為をすることができる(権利能力を取得する)ようになる。

⇒「権利能力なき社団」は、その名のとおり、社団自体に権利能力(法人格)がないことになる。


B 成立要件

①団体としての組織があること

②多数決の原則

③構成員の変更にもかかわらず、団体が存続すること。

④代表の方法、総会の運営、財産管理等、社団としての実態を備える必要性(最判昭39・10・15)


C 法律関係

①体外的な活動

※理事等の代表機関により行われる。

②団体の財産

※社団を構成する総社員の総有に属し、構成員の個人の債務の引当にはならない(判)

③団体の債務

※構成員全員に総有的に帰属

⇒構成員は個人責任は負わない(判)

④不動産登記

社団名義および社団代表者資格を表示した代表者名義ではできない。

⇒判例や実務では、代表者個人名義か構成員全員の共有名義とする。


【判例】

最判昭47.6.2

※「権利能力なき社団の資産たる不動産については、社団の代表者が、社団の構成員全員の受託者たる地位において、個人の名義で所有権の登記をすることができるにすぎず、社団を権利者とする登記をし、または、社団の代表者である旨の肩書を付した代表者個人名義の登記をすることは、許されないものと解すべきである」とする。

⇒要するに、権利能力なき社団もただ集団もこの点では変わらない扱いである。社団名義の登記を許すと、財産隠しに使われる場合があり、安易には登記は認められない。


(2)権利能力なき財団

※財団としての実態を持ちながらも法令上の要件を満たしていないため法人格を有しない財団をいう。「人格なき財団」ともいう。

【成立要件】

※判例によると、権利能力なき財団と呼ぶ要件には、

⇒個人財産から財産の拠出によって分離独立した基本財産を有し、かつ、その運営のための組織を有していることを必要としている。(最判昭和44年11月4日)

※この個人財産から分離独立した基本財産を有していなければならないという成立要件から、財団債権者は財団の基本財産のみを引き当てとすることになる。


4 法人格否認の法理

※法人であっても、実質的には個人企業にすぎないものについて、取引の相手方の保護のために法人格を否認して、その背後の個人の責任を追及する考え方を「法人格否認の法理」という。

【原則】 

※税金対策などのために法人化した個人企業などでも、法人とその構成員である社員は(たとえひとりでも)別の人格である。

⇒要するに、会社名義で取引をした場合は、構成員である社員はなんら取引の責任を(個人としては)負わないはずである。

【修正】

※しかし、会社すなわち個人のような場合は、たとえ会社名義の法律行為であっても、会社としての法人格を否定して個人の法律行為とし、または個人名義の法律行為であっても会社の法律行為として認めることもできる。


【判例】

『建物明渡請求事件(最判昭44.2.27)』

※法人格が全くの形骸にすぎない場合、またはそれが法律の適用を回避するために濫用されるような場合には、法人格を認める本来の目的に照らして許すべきものでないとして、法人格を否認すべきである。


※法人格否認の法理の適用要件

※この法理を適用する要件として、判例中に表れているものは以下のとおり

1 法人格の濫用

(法人格を利用し、ある義務を免れたり債権者を害そうとすることなど)

2 法人格が形骸化している

(その内容については不明確。財産や活動が混同していないかなどを要件とする下級審もあり)

 

※法人格が否認された場合の効果

・上記判例からの引用

※会社名義でされた取引についても、これを背後にある実体たる個人の行為と認めて、その責任を追求することができ、また、個人名義でされた取引についても、商法504条によらないで、直ちにこれを会社の行為と認めることができる。

かいひろし法律の部屋

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