民法のお勉強 総論 第5日

第4節 成年後見制度

1 成年後見制度の意義

※成年後見制度は精神上の障害 により判断能力が十分でない者が、取引等で不利益を被らないように 家庭裁判所に申立てをして、その者を援助してくれる人を付けてもらう制度です。

⇒知的障害、精神障害、認知症などの保護を目的としている。


2 成年後見制度の種類

※成年後見制度は、二種類に分けられる。

①法定後見

※本人の判断能力が不十分になった場合に家庭裁判所の審判により後見人(保佐人・補助人)が決定され開始するものである。

本人の判断能力の程度に応じて後見、保佐、補助の3類型がある。

②任意後見

※将来の後見人の候補者を本人があらかじめ選任しておくものである。

⇒法定後見が裁判所の審判によるものであるのに対し、任意後見は契約である。後見人候補者(受任者)と本人が契約当事者である。この契約は、公正証書によって行われる。


3 法定後見制度

(1)成年後見

①後見開始の審判

※精神上の障害により判断能力を欠く常況にある者を対象とする(7条)。

⇒なお、未成年者の知的障害者が成年に達する場合には法定代理人(親権者あるいは未成年後見人)がいなくなってしまうことから、その時に備えて申請を行う必要がある場合もあるため後見開始の審判の対象には未成年者も含まれる点に注意を要す。

※後見開始の審判の請求権者は本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人または検察官である(7条)。

【参考】

⇒なお市町村長も65歳以上の者、知的障害者、精神障害者につきその福祉を図るため特に必要があると認めるときは後見開始の審判を請求することができることとされている(老人福祉法32条、知的障害者福祉法28条、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律51条の11の2)。


※家庭裁判所の後見開始の審判により後見人を付すとの審判を受けた者を成年被後見人、本人に代わって法律行為を行う者として選任された者を成年後見人とよぶ(8条)。

※家庭裁判所は後見開始の審判をするときは職権で成年後見人を選任する(843条1項)。成年後見人については複数の者が選任されることがある(843条3項・859条の2)。

⇒また、法人が成年後見人となることもある(843条4項)。後見開始の審判については請求権者の請求に基づいてなされるが、成年後見人の選任は家庭裁判所の職権による。


②成年後見人の権能と成年被後見人の法律行為

※成年後見人は成年被後見人について広範な代理権(859条1項)と取消権(120条1項)、財産の管理権(859条)、療養看護義務(858条)をもつ。

⇒なお、成年後見人が成年被後見人に代わってその居住用の建物・敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない(859条の3)。

取消権については成年被後見人の日常生活に関する行為については取り消すことが出来ない(9条但書)

⇒また、身分法上の行為や治療行為などの事実行為に関する同意など、本人の意思のみによって決めるべき(一身専属的)事項についても取消権や代理権は行使できない(遺言につき962条、婚姻につき738条など)。なお、後見人が被後見人を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない(794条)。


※同意権については保佐人や補助人とは異なり認められていないと解するのが通説。

⇒成年被後見人は精神上の障害により判断能力を欠く常況にある(7条)ため、成年後見人が予め同意をしていても同意の直後に成年被後見人が判断能力を失ってしまうおそれがあるためである。

※したがって、成年後見人には同意権がないので成年被後見人の行為については成年後見人が同意した行為であっても取り消すころができる。

⇒なお成年後見人とは異なり、未成年後見人は未成年者の法定代理人として同意権が認められている(5条1項)。


③成年後見人の義務

※成年後見人は、成年被後見人の生活・療養看護・財産の管理事務を行うにあたり、成年被後見人の意思を尊重して、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない(858条)。

※利益相反行為

・成年後見人と成年被後見人との利益相反行為について、成年後見人は成年被後見人のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない(860条本文・826条)。

⇒ただし、後見監督人(後述)が選任されている場合には後見監督人による(860条但書)。

※後見監督人

・家庭裁判所は必要があると認めるときは、成年被後見人、その親族もしくは成年後見人の請求または職権により後見監督人を選任することができる(849条の2)。

⇒後見監督人の職務については851条・863条等に規定があり、後見監督人が選任されている場合には特にその同意を要する場合(864条・865条)がある。


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