第2章 民法総則
第1節 私権
1 私権をめぐる法律関係
※法によって保護される人の生活上の利益を権利という。
権利として保護されるかは、一般に以下のような形式で法で定められている。
⇒一定の事実があれば、法律要件を満たし、これによって法律関係が発生して、私人間に法律関係が成立することになる。
※この法律関係は権利義務の関係に分解されて、人は権利を取得して義務を負うことになる。
一般に私法によって保護される権利は私権といわれ、個人間の生活関係において享受しうる法的地位を意味することになる。
法律要件 ⇒ 法律効果
(要件充足) (権利義務の発生)
2 私権の行使に関する制約原理
① 公共の福祉の原則(1条1項)
※私権は個人の生活上の利益をその内容とする権利である。
⇒私権の内容も行使方法も公共の福祉、すなわち社会共同生活全体の利益に反することはできないとするもの。
この私権の社会性による制限を公共の福祉の原則という。
② 信義誠実の原則(1条2項)
※具体的取引関係のもとで、取引の当事者間の信頼関係を前提に、取引当事者は相手からの信頼を裏切らないように行動しなければならないとする。
⇒これを信義誠実の原則(信義則)といい、債券関係に関する一般的指導原理とされている。
※信義則の機能
1 法律行為の解釈基準となる
(契約の解釈基準など…)
2 法の欠缺を補充する基準となる
3 法の形式的適用による不都合に修正する基準となる
※信義則の派生原則
①自らの行為に矛盾した態度をとることは許されないとする禁反言の法理(民法109条)
②法をみずから尊重する者のみが法の尊重を要求できるというクリーンハンズの原則(708条)
※参考条文
第109条(代理権授与の表示による表見代理)
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
第708条(不法原因給付)
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
0コメント