民法条文整理 第20条~第21条

民法第20条(制限行為能力者の相手方の催告権)  

1. 制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。 

2. 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。 

3. 特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。 

4. 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第17条第1項の審判を受けた被補助人に対しては、第1項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。 


 重要度3  

解説等メモ書き 

【解説】 

※制限行為能力者の相手方が有する催告権についての規定である。 

⇒催告の相手に応じて、確答等がない場合に発生する法的効果に違いが生じる。  


 ○特別の方式を要する行為 

※民法第864条(後見監督人の同意を要する行為) 

後見人が、被後見人に代わって営業若しくは第13条第1項 各号に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。ただし、同項第一号 に掲げる元本の領収については、この限りでない。


【参考】 

・法定代理人、保佐人又は補助人が単独で同意を与え、又は代理できないような特別の方式を必要とする行為については、その方式をとって返事をしない限り、その取引は取り消されたものとなる。

 ※解釈・判例 

・制限行為能力者の「取消権の対象となる相手方の不安定な地位を解消するために、相手方に催告権を与え、もって法律関係の速やかな確定を可能」とした。 

・第3項の特別の方式を要する行為とは、後見人が後見監督人の同意を得なければならない場合である(864条)。  

・制限行為能力者及びその保護者からの確答は、民法の到達主義の原則(97条参照)の例外として、発信主義を採用している。 


暗記 

1 制限行為能力者の相手方の催告権 

【要件】

①催告の受領能力があり、かつ、取消・追認をなし得る者に対してすること。 

②1か月以上の期間を定めて、取り消すことができる行為を追認するか否かを確答すべき旨を催告すること。 

→被保佐人・同意権付与の審判を受けた被補助人に対しては、1か月以上の期間を定めて、取り消すことができる行為について保佐人・補助人の追認を得るべき旨の催告ができる。

 

2 催告の相手方と効果

 制限能力者     催告時期        催告の相手方    効果

① 未成年者   能力者となった後      本人      追認(1項)

         制限行為能力者である間  法定代理人    追認(2項) → 特別の方式を要

                                     する行為につい

                                     ては取消(3項)

② 成年被後見人 能力者となった後      本人      追認(1項)

         制限行為能力者である間  法定代理人    追認(2項) → 特別の方式を要

                                     する行為につい

                                     ては取消(3項)

③  被保佐人   能力者となった後      本人      追認(1項)

   被補助人  制限行為能力者である間  本人(※)     取消(4項)

________________________________________ 

民法第21条(制限能力者の詐術) 

制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。 


 重要度3  

解説等メモ書き 

※まず、行為能力者であることを信じさせる目的が制限行為能力者にあったことが必要とされる。 

⇒次に、制限行為能力者が詐術を用いることが必要。

※詐術を用いたとされる場合としては、偽証をした場合が典型的であるが、単に自分が制限能力者ではないと告げた場合も詐術を用いたと認定される場合もある。 

※この規定があるのは、制限行為能力者自身の帰責も大きいことと、相手方の保護も必要であるからである。

⇒つまり、相手方が詐術により、制限行為能力者が行為能力者であることを信じることなども、本条の効果発生のための要件となる。 

※取り消すことができないのは、制限行為能力者の法定代理人についても同様と解されている点に注意が必要。 

 ※従来、この規定は民法第20条に存在したが、平成16年の民法改正により、 前後の条文の整理がなされたため、改正後は、民法第21条に移転した。 


【参考】 

暗記 

※制限行為能力者の詐術の要件・効果 


①制限行為能力者が、相手方に行為能力者であると信じさせるために積極的に詐術を用いたこと。(※1、2)

 ② 相手方が制限行為能力者を能力者と信じたこと。 

【効果】

制限行為能力を理由に取り消すことができなくなる。

※1 法定代理人、保佐人、補助人の同意を得ていると偽った場合も詐術に含まれる。 

※2【判例) 

単に黙秘することだけでは詐術に当たらないが、制限行為能力者であることを黙秘することが、制限行為能力者の他の言動などと相まって、相手方を誤信させ、又は誤信を強めたものと認められるときには、積極的詐術を用いない場合でも本条にいう詐術に当たるとされた(最判昭44.2.13)。 


・本条は、欺罔的手段を用いた制限行為能力者は保護する必要がないので、制限行為能力者を行為能力者と信じて取引を行った相手方の利益保護を図ったものである。


○暗記 

 ※制限行為能力者保護制度のまとめ 

1 定義

①未成年者 

  ―  

②成年被後見人

・精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況にある者(7条)

③被保佐人

・精神上の障害により事理弁識能力が著しく不十分な者(11条)

④被補助人

・精神上の障害により事理弁識能力が不十分な者(15条1項) 


2 保護者

①未成年者

・親権者又は 未成年後見人

②成年被後見人

・成年後見人である

③被保佐人

・保佐人である 

④被補助人

・補助人である 


3 開始の審判請求時の本人の同意の要否

①未成年者

・不要とされる 

②成年被後見人

・不要とされる 

③被保佐人

・不要とされる 

④被補助人

・本人以外の者の請求による場合、必要(15条2項) 


4 保護者の同意権

①未成年者

・有り(5条1項)

②成年被後見人

・無し

③被保佐人

・13条1項各号に定める行為について、同意権有り(13条1項) ※1

④被補助人

 ・同意権付与の審判があれば、13条1項各号に定める行為の特定の一部について、同意権有り(17条1項)※1 


5 保護者の取消権

①未成年

・有り (120条1項、5条2項)

②成年被後見人

・有り (120条1項)※2 有り 

③被保佐人

・(120条1項)※2

④被補助人

・同意権付与の審判があれば、有り (120条1項、17条1項)※2 


6 保護者の代理権

①未成年者

・有り (824条、859条)

②成年被後見人

・有り (859条1項)

③被保佐人

代理権付与の審判があれば、有り(876条の4第1項)※3

④被補助人

代理権付与の審判があれば、有り(876条の9第1項)※3 


※1 ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、同意権無しとされる。 

※2 ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、取消し不可である。 

※3 本人以外の者の請求によって代理権付与の審判をするには、本人の同意が必要(876条の4第2項、876条の9第2項)。 

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