民法条文整理 第16条~19条

民法第16条(被補助人及び補助人) 

補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。 


 重要度3

解説等 メモ書き 

※被補助人と補助人についての規定。

  

○登記 

※補助開始の審判がなされると、「後見登記等に関する法律」により被補助人について成年後見登記がなされる。

⇒補助登記事実について閲覧は厳しく制限されていて、本人他一定の関係者のみが登記事項の証明書又は登記されていないことの証明書の発行を法務局に求めることができる。  


【参考】 

※被補助人は、精神障害の程度が比較的低いので、ある程度のことは問題なくできる。

 ⇒その為、補助人の代理権については原則として付与されておらず、例外として、家庭裁判所の審判により、「被補助人の特定の法律行為についてのみ代理権を付与される」ことがある(第876条の9第1項)。 

 ※どのような行為について補助人の同意を要するのかは、被補助人によって、異なる。 

⇒ただし、家庭裁判所は、補助人の同意を要するものは、「第13条第1項各号の行為の一部」に限られる(第17条第1項ただし書き参照)。 

※なお、補助人の同意を要する行為以外の行為については、被補助人は、補助人の同意を要することなく、他の行為能力者と同じように、単独でおこなうことができる。  

※また、成年被後見人の場合とは違って、補助人の同意があった行為については、取消すことができない。 

________________________________________ 

民法第17条(補助人の同意を要する旨の審判等) 

1. 家庭裁判所は、第15条第1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第13条第1項に規定する行為の一部に限る。 

2. 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。 

3. 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。 

4. 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。 


 重要度3 

解説等 メモ書き 

※補助人の同意権について定めた規定。  


※補助とは、平成11年の民法改正の際に新たに設けられた成年後見制度の一つである。

 ⇒保佐とくらべて、障害の程度がより軽度な場合が予定されている類型であるが、保佐人の場合と同様、一定の要件の元に、補助人にも同意権が認められることとなる。 

 

【解釈】 

・同意権は、申立てのあった特定の法律行為に限定して付与される。

⇒「この場合の特定の法律行為は13条1項に列挙された行為の一部に限られる」(1項)。

※同意権を与える審判の場合、本人以外の者の請求の場合は本人の同意が必要であり、「同意権を与えるか否か本人の自己決定に委ねられている」(2項)。  

・補助人に同意権のみを与えること、又は代理権のみを与えること、若しくは両方を与えることも可能とされる(876条の9第1項)。

⇒しかし、補助開始の審判を受けていながら、そのいずれも付与しないということはできない。

※したがって、「補助人に代理権等を付与する審判が取り消されると(18条2項、876条の9第1項)、補助開始の審判も同時に取り消される」ことになる(18条3項)。 


【重要項目】 

※補助人の権限 

①補助開始の際の審判によって付与された本人が行う特定の法律行為についての代理権(876条の9第1項)、同意権(17条1項、4項) 

②本人が行った特定の法律行為につき取消権(120条1項)、追認権(122条) 

※同意権付与・代理権付与の審判は、補助開始の審判の請求権者・補助人・補助監督人の請求によってなされる(民17条1項、876条の9第1項)。

・被補助人以外の者の請求により同意権・代理権付与の審判をするには、被補助人の同意を要する(本条2項、876条の9第2項、876条の4第2項)。 

※代理権を付与することができるのは、特定の法律行為とされるが、同意権付与の場合と異なり、民法13条1項に掲げられた行為の一部に限られない。 

※補助人が被補助人に代わって居住用不動産を処分する場合

⇒家庭裁判所の許可が必要である(876条の10第1項、859条の3)。 ________________________________________ 

民法第18条(補助開始の審判等の取消し)

 1. 第15条第一項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない。 

2. 家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第一項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。 

3. 前条第一項の審判及び第876条の9第一項 の審判をすべて取り消す場合には、家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならない。 


 重要度3  

解説等メモ書き 

①家庭裁判所は、1項に掲げた者の請求により、17条1項の補助人に同意権を付与する旨の審判の全部又は一部を取り消すことができる。 

②17条1項の補助人に同意権を付与する旨の審判及び876条の9第1項の補助人に代理権を付与する旨の審判をすべて取り消す場合

⇒家庭裁判所は補助開始の審判を取り消さなければならない。 


【解説】 

※補助開始の審判の取消の要件・効果 

:要件

①被補助人の事理弁識能力が不十分である常況でなくなったこと。

②請求権者が家庭裁判所に当該審判の取消を請求すること。 

:効果

家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならない。 

→取消しが確定すると、補助開始の審判は将来に向かって効力を失う。 


【参考】 

※民法第18条第1項(補助開始の審判等の取消し)

解説 

 ○趣旨 

※本項は、補助開始の審判の取消しについて規定している。 

※認知症、知的障害、精神障害などの物事の認識が不十分な原因が消滅した者については、家庭裁判所は、次のいずれかの者の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならないとされる。 

1. 本人 

2. 配偶者 

3. 4親等内の親族 

4. 未成年後見人 

5. 未成年後見監督人 

6. 補助人 

7. 補助監督人 

8. 検察官 


 ※民法第18条第2項(補助開始の審判等の取消し)

解説 

 ○趣旨  

※本項は、第17条第1項にもとづく家庭裁判所の審判の審判の取消しについて規定している。  

※第17条第1項により、補助人の同意を要するものとされた行為についても、次のいずれかの者の請求により、その全部または一部を取消すことができる。  

1. 本人 

2. 配偶者 

3. 4親等内の親族 

4. 未成年後見人 

5. 未成年後見監督人 

6. 補助人 

7. 補助監督人 

8. 検察官

 

 ※民法第18条第3項(補助開始の審判等の取消し)

解説  

○趣旨 

※本項は、第17条第1項の審判および第876条の9第1項の審判の取消しによる補助開始の審判の取消しについて規定している。 

※第17条第1項の審判および第876条の9第1項の審判は、補助開始の審判と一体として同時におこなわなければならない(第15条第3項)。 

※これは、第17条第1項の審判により補助人の同意を要する行為を決定し、第876条の9第1項の審判により補助人の代理権を決定するからである。  

※これらの双方の審判すべてを取り消すということは、すでに被補助人としての補助を受ける必要がないということになる。

⇒このため、「これらの双方の審判すべてを取り消した場合は、家庭裁判所は、補助開始の審判の審判も取り消さなければならなくなる。」

 ________________________________________ 

民法第19条(審判相互の関係)  

1. 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない。 

2. 前項の規定は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき、又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用する。

 

 重要度3 

解説等 メモ書き 

【解説】 

※重複審判を避けるため、従前の審判は取消すものとした。 

※民法第19条は、成年後見、保佐、補助の制度が抵触しないように、調整する規定である。  

⇒つまり、後見開始の審判は、保佐開始の審判や補助開始の審判とは別物の審判であるため、成年被後見人と被保佐人や被補助人の地位を兼ねることができないからである。 

※このため、家庭裁判所は、後見開始の審判があった場合は、保佐開始の審判や補助開始の審判を取り消さなければならない。 


 【参考】 

※民法第19条第1項(審判相互の関係)

解説 

 ○趣旨 

※本項は、制限行為能力に関する審判の相互の優劣関係について規定している。

 ※後見開始の審判(第7条参照)をおこなう場合、本人が被保佐人(第11条参照)、または被補助人(第15条第1項参照)であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始または補助開始の審判を取り消さなければならない。  

※後見開始の審判は、保佐開始の審判や補助開始の審判とは別物の審判です。また、成年被後見人と被保佐人や被補助人の地位を兼ねることはできないとされる。 

⇒このため、家庭裁判所は、後見開始の審判があった場合は、保佐開始の審判や補助開始の審判を取り消さなければならない。

 

 ※民法第19条第2項(審判相互の関係)

解説 

 ○趣旨 

※本項は、制限行為能力者に関する審判の相互の優劣関係について規定している。 

※保佐開始の審判(第11条参照)をおこなう場合、成年被後見人(第7条参照)であるとき、または被補助人(第15条第1項参照)であるときは、

⇒家庭裁判所は、その本人に係る後見開始または補助開始の審判を取り消さなければならない。 

※保佐開始の審判は、後見開始の審判や補助開始の審判とは別物の審判だからである。

※また、被保佐人と成年被後見人や被補助人の地位を兼ねることはできません。  

※また、補助開始の審判(第15条第1項参照)をおこなう場合、「成年被後見人(第7条参照)であるとき、または被保佐人(第11条参照)であるときは、

⇒家庭裁判所は、その本人に係る後見開始または保佐開始の審判を取り消さなければならない

※補助開始の審判は、後見開始の審判や保佐開始の審判とは別物の審判だからである。

また、成年被後見人と被保佐人や被保佐人の地位を兼ねることはできない。 

このため、家庭裁判所は、保佐開始の審判や補助開始の審判があった場合は、他の審判を取り消さなければならない。 

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