憲法のお勉強 第20日

3 外国人

(1)意義

※外国人の人権享有主体性、ここで言う外国人とは、単純に日本国籍を有しない者をいう。


(2)人権享有主体性

【問題の所在】

 外国人にも人権規定が適用されるか。


①否定説

1、否定説は、日本国憲法の規定する人権は、日本国民にのみ保障される、とする。

⇒日本国の憲法は、第 3 章で人権について定めているが、その第 3 章が、「国民の権利及び義務」と題していること等を根拠とするものである。

2、ただし、立法政策として、外国人に対してなるべく人権を保障することは、望ましいという立場に立っている。この否定説に対しては、後で肯定説で記すように、「人権は、本来前国家的なものであるはずである」という疑問などが呈されている。


②準用説

1、日本国憲法の人権規定は、外国人に対して準用されるとする、準用説も主張される。

⇒日本国民に関する規定を、本質的に異なる外国人に関して及ぼす場合なので、準用であるとするのである。

2、また、準用であるので、修正も可能であるとする。しかし、そもそも適用を否定する点などに対し、批判があるのも事実である。


③肯定説

1、肯定説は、日本国憲法の人権規定が、「一定の範囲内で外国人にも適用される」とする。日本国憲法の保障する人権が、前国家的な性質を有するものであり、また、憲法が、国際協調主義の立場をとっていること等を根拠としている。

⇒肯定説は、外国人に対して、どのような人権が保障されるかを判別する基準に関して、文言説と性質説に分けられる。


③-1 文言説

1、日本国憲法の文言を手がかりにする。

⇒憲法の人権規定のうち、「国民は」となっている規定は、外国人には適用されないが、「何人も」となっている規定は、外国人にも適用される、とするものである。

2、この場合、憲法の条文上、「国民は」と「何人も」が、厳格に使い分れているわけではない、と指摘されている。

⇒例えば、憲法第22条第 2項は、「何人も、(中略)国籍を離脱する自由を侵されない。」と規定している。

3、しかし、憲法で、国籍離脱の自由を保障されているのは、日本国民であるので、文言説には、この意味を考えると難点があるとされる。


③-2 性質説

1、憲法が保障している人権の性質により、外国人に対して、人権が保障されるか否か、判断することになるとするものである。この性質説が、通説とされている。

2、また、外国人に対する人権保障の有無、および程度を判断する際には、外国人の類型も十分に考慮しなければならない、との指摘もなされている。

⇒外国人という枠で一括りにするのではなく、その中には、一般外国人(一時的な旅行者など)、定住外国人、難民等、態様の異なる者がいることを踏まえる必要がある、とするものである。


(3)保障されない人権

1、外国人にも、権利の性質上適用可能な人権規定はすべて適用される(性質説)ことになる。しかし、権利の性質上外国人に適用されない人権規定もある。

⇒適用されないとしても法律ないし具体的な処分によって保障を及ぼすべき領域があるかが問題となる。


① 参政権

(1)選挙権・被選挙権

・従来、参政権は、日本国民だけに保障される権利であるとされてきている。その根拠としては、国民主権の原理が挙げられる。

⇒現行法も、「公職選挙法」には、第 9 条で選挙権を、第10条で被選挙権を、それぞれ日本国民に限定して規定していること。また、国のレベルの参政権について、最高裁判所は、「国会議員の選挙権を有する者を日本国民に限っている公職選挙法九条一項の規定が憲法一五条、一四条の規定に違反するものでない」という判断をだしている。


・これに対して、参政権の保障を、一定の外国人にも拡大することを肯定する見解も主張されてきている。

⇒特に、地方公共団体における選挙権については、この議論が分かれている。この点について、学説は、次の 3 つの立場に分類されることになる。


a禁止説

・地方公共団体であっても、選挙権を外国人に付与することは禁止されるという見解がこれである。


b許容説

・外国人への選挙権の保障においては、憲法上許容されているとする説があり、憲法は、選挙権の付与を、禁止していないが、保障もしておらず、立法政策の問題であるとするものである。


c要請説

・憲法は、選挙権の外国人への保障を要請しているとする立場がある。

⇒現在、最高裁判所は、次のような判断を示している。

「我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるもの」に対して、「法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」。

続けて、「しかしながら、右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない」。

※この判例は、 3 つの見解のうち、選挙権の付与を許容する第二の立場に立っているといえるのである。


(2)公務就任権 ― 広義の参政権

【問題の所在】

・なぜこのような事が問題になるかというと、公務員というものは、すなわち行政権の一端を担うわけで、国民主権上どうなのか、という問題である。 

⇒公務員というものは、それこそ幅広いもので、国立大学の教授や国立の研究所の研究員も含まれ、議員や裁判官も公務員に当てはまるのである。


【結論】

・国民主権の原理から言えば、統治作用にかかわり、公権力を行使し得る職務について外国人が就任することは問題があり、つまり、違憲と考えているのである。

⇒しかし、ひと口に公務員と言ってもその内容は広範囲であること。

国立大学の教授も公務員になることになり、公立図書館の職員や公立学校の語学などの専任教師も、これまた公務員になります。公務員と言えども、公権力にかかわりが低い職務も実際に存在することになり、このような場合であれば、外国人にも公務就任権を保障されている。



かいひろし法律の部屋

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