第3節 未成年者
1 未成年者の意義
※未成年者とは、満20歳未満の者をいう。
⇒民法では、満20歳に達したときを成年とする(4条)。
年齢は、出生の日から起算して暦にしたがって計算することになる(年齢計算ニ関スル法律)。
2 未成年者の行為能力
(1)原則
※未成年者が取引(法律行為)を行うには、原則として法定代理人の同意を得なければならない(5条1項本文)とし、未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為は、取り消すことができる(5条2項)。
⇒取消権者は、未成年者本人(とその承継人)およびその代理人である(120条1項)。
※民法では、未成年者は、精神状態が成熟していないと捉えるので、法律行為を行うときには法定代理人の同意を要するとしている。
①法定代理人
※法定代理人とは、法律の規定に基づき、代理権が発生する場合の代理人をいう。
⇒通常は、本人(未成年者)の親が法定代理人を務めます(818条、819条)。
しかし、親権を行使する者がいないときや、親権者が管理権を有さないときは、家庭裁判所が未成年後見人を選任して、この未成年後見人が法定代理人になる(838条、840条)
②親権
※親権とは、未成年の子に対して親権を行う者をいいます。
⇒父母が未成年の子を成年にとなるまで養育するため、子を監護教育してこの財産を管理することを内容とし、親の権利義務の総称のことをいう。
※通常は父母が親権者となり(818条1項)、父母の婚姻中は、両親が共同して親権を行使します。(共同親権、同条3項)
最も何かの事情で、親権の共同行使ができない場合は、片方の親が親権を行使することになります。(同条3条但し書き)
③法定代理人の同意
※法定代理人が未成年者に対して、未成年者の法律行為について同意を与えることにより、その法律行為は、法律上完全な効力が生じるようになる。
【判例の立場】
※法定代理人が与える同意は、明治である場合はもちろん、黙示である場合も認めている。
(大決昭和5年7月21日)
【追認】
※事後に同意を与えることを追認と呼び、取引の相手方に対して追認がなされれば(123条)、その法律行為の効力は確定したことになります(122条)。
④法定代理人の同意を得ていない場合
※未成年者またはその法定代理人は、取り消しの意思表示をすることによって、未成年者が行った法律行為が、当初から無効であったとすることができる。
⇒未成年者が取り消しをすることについて、未成年者に不利益が生じるわけではなく、法定代理人の同意は不要となる。
【例外】
※未成年者が単独でなしうる法律行為
※以下の行為は未成年者であろうとも法定代理人の同意を得ずに単独で行うことができる。
①単に権利を得、または義務を免れる行為(第5条1項但し書き)
※例:単純な贈与(549条)を受ける場合、債務免除(549条)を受ける場合。
⇒未成年者の行為能力を制限して未成年の保護をするという趣旨を及ぼす必要性がないため、未成年者は単独で行うことができる。
②自由財産の処分(第5条3項)
ア 法定代理人が目的を定めて未成年者に処分を許した場合。
※例:本を買うために親が未成年者に与えた金銭等
⇒法定代理人が目的を定めて処分を許した財産については、その処分が目的の範囲内である限り、法定代理人の同意があると考えるので、未成年者本人が単独で行うことができる。
イ 法定代理人が目的を定めずに未成年者に処分を許した財産(同項後段)
※例:毎月の小遣いとして親が未成年者に与えた金銭。
⇒法定代理人が目的を定めずに処分を許した財産は、未成年者がこれを自由に処分することができる。
(法定代理人の包括的な同意があったものとして考える)
③営業を許された未成年者の営業に関する行為(第6条1項)
※営業を許された未成年者については、営業を続けることが困難な状況にあれば、親権者が法定代理人である場合には823条2項により、未成年後見人が法定代理人である場合には857条により、営業の許可を取り消し、又は制限することができる。
※許可された営業の範囲内で未成年者の行為能力を解放し、未成年者の活動と取引の安全の調和を図った規定。
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