第2節 行為能力
1 権利能力
意義
※私法上の権利、義務の帰属主体となる地位・資格のことである。
⇒権利能力を有する主体は「人」と呼ばれている。そして自然人と法人に分類される。
すなわち、権利能力を有するということは法的な意義において人格を有するということである。この権利能力がないと取引面という場面で不利益をこうむる場合もある。
それゆえ、権利能力というものは重要である。
適格
これの適格は、自然人と法人に与えられる。
※制限行為能力者の行為の効力
⇒権利・義務が帰属しない
2 意思能力
意義
※行為の結果を弁識するに足るだけの精神能力
⇒意思能力は行為能力とは異なり実定法上に具体化されてはいない。意思能力の存在は、私的自治の原則(意思自治の原則)を基本とし構成されている私法上の法律関係においては当然の前提とされる。
※具体的行為ごとに、その状況を判断する(7歳~10歳程度の能力)。
民法その他の法令に、「有効な行為を為すためには意思能力が必要である」という旨の定めはない。
※制限行為能力者の行為の効力
しかし、私的自治の原則の前提から意思能力を欠く人(意思無能力者)の法律行為は無効とされる(大判明治38年5月11日)。
3 責任能力
意義
※不法行為の面で、自己の行為の責任を弁識するに足る精神上の能力。
⇒民法における「不法行為責任」を立証するためには、犯行者に責任能力があることが絶対条件となる。これは民法709条で保障される。
【民法709条】
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
例外として、「責任能力はない」と判断される場合がある。
犯行者が未成年者である場合と、心神喪失者である場合である。
※具体的行為ごとに判断する。
判例では、意思能力より少し高い状況に設定されている。
(11歳~12歳程度の判断能力)
※制限行為能力者の行為の効力
⇒不法行為責任は負わない(712、713)。
ただし、714条参照。
第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)
1 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。
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