民法のお勉強 物権編 第8日

続不動産登記に関しての参考掲載です

(6)登記の種類

・不動産登記制度は、不動産の物理的な情報と、権利の情報を申請順に登記簿に記載することで、公に情報を共有し、権利者の権利保存・取引の安定と円滑化を図ることを目的とする。

※いくつかの基準による種類と、権利者として登記できる権利の種類は以下のようなものがある。


①所有権保存登記

・住宅などを新築した人が、一番最初にする所有権についての登記を、所有権保存登記という。

⇒保存登記は、「最初の登記」ということになる。この所有権保存登記を施すことで、その所有者が自分であることを第三者に対し主張できることになる。


②所有移転登記 (土地、建物を売買した場合)

・家や土地を購入したら、必ず「所有権移転登記」をしなければならない。

⇒これは「この不動産は自分のものである」と公示するためのもので、1番大切な手続きである。

※もしこの申請を行わずに第三者が所有移転登記をしてしまった場合、その家や土地は第三者のものとして公示され、自分のものであると証明するには大変な時間と労力を費やすことになるからである。


③所有移転登記 (土地、建物を相続した場合)

・土地や建物を相続した場合、その土地の名義を変更する必要があり、その名義変更を「相続登記」と言う。

・身内や親族の方などが亡くなられた場合、通常は法律に定める通りに「相続人」が財産を相続することになるときに所有権を移転することになる。

⇒またその他にも遺言書や話し合い(遺産分割協議)に よって相続人が決められることもある。不動産の名義変更は相続の中でもっとも重要であり、この手続きが必要となる時に登記が必要となる。


④所有移転登記(土地、建物を贈与した場合)

 ・資産価値の高い不動産を所有している場合、その財産を子供などに受け継ぐ方法のひとつとして生前贈与があります。

⇒不動産の所有者が生きている間に、特定の人物に対してその不動産を譲渡する場合に所有権の移転登記が必要となる。


⑤抵当権設定登記・抹消登記

1 抵当権設定登記

(お金の貸し借りで、土地、建物を担保にした とき)

・住宅ローンなどでお金を借りたとき、家や土地を担保とするために必要な手続きとされ、この場合に抵当権を設定したときに行う登記である。


2 抹消登記

(ローンを返済し、担保権を抹消する場合)

・家や土地を担保に借りたお金を完済したとき、抵当権を抹消  することになる。

⇒この末梢登記は住宅ローンを完済した場合に行われるのが一般的である。


⑥所有権登記名義人表示変更登記

※(不動産の所有者等の住所や氏名に変更があったとき)

・建物を所有する名義人の住所が変更されたり、結婚・離婚等をすることにより、名義人の氏名が変更した場合などに行う登記である。

⇒この登記は、義務化されていないので、登記簿の住所と違う住所地に名義人が住んでいても違法にはならないが、不動産を売買したり、抵当権を設定する場合には、必ず所有権登記名義人表示変更登記をする必要がある。


⑦変更登記

・後発的に実体関係に変化があったために、登記されている事項が実体関係と一致しない場合に訂正するための登記である。

⇒次の更正登記と変更登記の違いは、表示と現実の不一致の登記の前後どちらで発生したかによって異なる。登記後に不一致が生じていれば変更登記で処理することになり、登記前に不一致が生じていれば更正登記によって処理することになる。


⑧更正登記

・更正登記というのは、不動産登記簿に記載されている登記事項が、その登記の時点において錯誤や遺漏により、事実関係と不一致があった場合に、登記事項を事実関係に一致させるための登記のことをいう。

 

・登記事項に「錯誤又は遺漏」があった場合に、当該登記事項を訂正する登記をいう(法2条16号)。

⇒変更登記が、登記事項が事後的に変動した場合に行われるのに対し、登記事項が当初から誤っていた場合に行われる点で異なる。

土地の地目・地積等が誤っていたとき、建物の種類・構造・床面積等が誤っていたときは、更正登記がされる(法38条、法53条)。

※なお、更正登記のうち、錯誤や遺漏が登記官の過誤による場合は、更正登記を職権で行うことができることになっている。


(7)登記すべき不動産

・民法は不動産とは土地およびその定着物であるとだけ定義しているが(86条1項)、わが国で建物は土地から独立の存在を認められ、別個に取引の対象とされるので、別個の登記簿が整備されている。

①樹木の集団は立木法によって登記されることにより、土地から独立の不動産とされる。

②その他の樹木の場合は、土地と離れて取引される習慣があっても、これを登記する方法はない。別の方法でその権利関係が公示されることになっている。


(8)登記ができる物権

・所有権・地上権・永小作権・地役権・不動産先取特権・不動産質権・抵当権・不動産貸借権および採石権である(不動産登記法3条)。

⇒不動産物権のうちでも、占有権・留置権・一般先取特権・および入会権であは登記を必要とはしていない(不3条参照)。

 それはそれぞれ特殊の性質を持っているということである。

※物権以外で登記される重要なものは、貸借権である。

⇒不動産貸借権は債権であるが、登記をすれば第三者に対抗できるとされている(605条、不3条8号)。

※ちなみに、建物および農地の貸借権は「目的物の引渡し」によって対抗力を生じる(借地借家31条1項、農地18条1項)。

⇒その二つは、不動産買戻権(579条、不96条)である。その性質は形成権であり、物権取得権とでもいうべきものであるが、物権並みの地位を認められている。


(9)登記事項の証明(参考)

 ※不動産登記

①全部事項証明書

・登記記録(閉鎖登記記録を除く。以下一棟建物現在事項証明書の項まで同じ)に記録されている事項の全部を証明したもの(不動産登記規則196条1項1号)

②現在事項証明書

・登記記録に記録されている事項のうち現に効力を有する部分を証明したもの(同規則196条1項2号)

③何区何番事項証明書

・権利部の相当区に記録されている事項のうち請求に係る部分を証明したもの(同規則196条1項3号)

④所有者証明書

・登記記録に記録されている現在の所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所を証明したもの(同規則196条1項4号)

⑤-1一棟建物全部事項証明書

・一棟の建物に属するすべての区分建物である建物の登記記録に記録されている事項の全部を証明したもの(同規則196条1項5号)

⑤-2一棟建物現在事項証明書

・一棟の建物に属するすべての区分建物である建物の登記記録に記録されている事項のうち現に効力を有する部分を証明したもの(同規則196条1項6号)

⑥閉鎖事項証明書

・全部事項証明書・何区何番事項証明書・一棟建物全部事項証明書について、閉鎖された登記記録に係る部分を証明したもの(同規則196条2項)

⑦登記事項要約書

・不動産の表示に関する事項及び、所有権に関するものについては申請の受付の年月日及び受付番号・所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所・登記名義人が2人以上であるときはそれぞれの持分、所有権以外のものについては現に効力を有するもののうち主要な事項を記載したもの(同規則198条1項)

 ※何人も、登記官に対し、手数料を納付して登記記録に記載されている事項の全部または一部を証明した書類の交付ができることになっている。

 

(10)登記の有効条件

・登記は、形式的には不動産登記法に定められた形式を備えており、実質的にはその登記が実際の権利関係に合致していることで、有効なものとなる。

⇒ただし、実質的要件として、(登記は単に物権の現状を公示するだけでなく、物権変動について公示し、取引の過程なども示すことでその不動産についての調査を可能とするものでもあるため、正確に権利関係の過程を示していることが望ましいが、登記には費用などもかかり、第三者が害されるのでなければ登記を有効としても良いと考えられており)完全に正確な物権変動の過程を示していることまでは必要とされていない。

また形式的要件についても、法に定められた形式を備えていないものについては登記官が登記申請を却下することとなっているが、間違って受理してしまった場合に、一律に無効とはされない。


(ア)登記簿への記録

・登記があるというためには、申請の受理だけではなく、登記簿に記録されることを要する。

⇒いったん有効とされた登記が、あやまって抹消された場合は、その抹消の記録は無効であり、本来の登記は有効である。


(イ)一不動産一登記記録主義

・登記は一個の不動産について1つの登記記録しか設けられないことになっている(不2条5号参照)。


(ウ)暇疵がないこと

※暇疵

・瑕疵とは、ある物に対し一般的に備わっていて当然の機能が備わっていないこと。あるべき品質や性能が欠如していることをいう。

⇒欠陥(厳密には、瑕疵⊃欠陥の関係である。瑕疵は不完全・ミス・誤謬・不足・不十分を指す、欠陥は安全に係る瑕疵を指す)。

※登記官の過誤により、登記そのものに瑕疵があり、あるいは登記手続きに瑕疵があって登記が無効となる場合がある。

たとえば、登記官があやまって不動産登記法に違反するような登記をしたり、申請をと異なる登記をした場合などがその例である。


(エ)実態と異なる登記

・登記は事実上の物権ないし物権変動を公示するためのものであるから、仮に登記があっても、実態がこれに伴わない場合は無効である。

 ①建物の実際とかけ離れた登記

 ②Aが新築して所有する建物を、Bが勝手に自分名義にした保存登記

 ③甲地の売買をあやまった申請により、乙地の登記簿に記載した登記

 ④錯誤によって無効の売買に基づく移転登記


※もっとも意思表示が取り消された場合の登記については、物権変動の対抗力との関係で一概に無効とはいえない。

※実体を伴わない登記の無効の原則に対しては、登記が先にされた後から、実態関係が追完される場合がありうる。


※最重要

①建設中でまだ建物といえない時期に登記がされた場合は無効であるが、後に建物が完成し、登記と符号すれば、登記は有効となる。

②建物が焼失した場合は、その登記は無効となり、跡地に同様の建物を建てた場合の効力は認められない。


(オ)権利変動の過程に符号しない登記

・登記が権利変動の過程を忠実に表示していない場合にも、それが現在の物権関係と符号していれば有効と解すべきである。

 ①登記原因が贈与であるのに売買した登記

 ②未登記の建物の買主が自分でした保存登記も有効である


かいひろし法律の部屋

今学んでいる法律の学問を記します。

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