憲法のお勉強 第28日

2 憲法における平等原則  

※第14条規定

・第14条第1項では、まず「すべての国民は、法の下に平等であって」と 定めている。

⇒これは、「法の下の平等の原理」を明らかにし、さらにその内容を具体化している。

(人種・信条・性別・社会的身分・門地により、政治的・経済的 または社会的関係において差別されてはならないもの)


【参考】  

・平等原則を憲法上どのように想定するかは、国により時代によって異なる部分が見える。

⇒明治憲法は、「日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所ノ資格ニ応シ均ク文武官 ニ任セラレ及其ノ他ノ公務ニ就クコトヲ得」(19 条)と定め、公務就任資格の平等というかたちでしか保障していなかった。 

・これに対して、日本国憲法は、14 条 1 項において、法の下の平等の基 本原則を宣言している。

⇒さらに、個別的に見ると…

① 貴族制度の廃止(14 条 2 項)

② 栄転 にともなう特権の廃止(同 3 項)

③ 普通選挙の一般原則(15 条 3 項)

④ 選挙人の資格の平等(44 条)

⑤ 夫婦の同等と両性の本質的平等(24 条)

⑥ 教育の機会均等(26条)

※という規定を特別に設けて、平等権ないし平等原則 の徹底化を図る。


※法の下の平等の意味  

・ここにいう「法」とは国会の議決によって成立する形式的意味の法律に限られわけではなく、すべての実質的意味の法を意味することになる。

⇒すなわち、政令・条例な どの成文法のみならず、判例法・慣習法も含まれるとするものである。

 ・たとえば、性別によって人を差別する慣習法も本項(第14条の意味において)に反することになる。 


(一)法内容の平等  

・次に、「法の下に」とは、例をあげればワイマール憲法の「法の前に」(第109 条)、フランス人権宣言の「法の眼からは」と同じ意味をもち、「法の下 」にという文字からして、法の適用の下においての全体的な平等をいい、すなわちすでに 定立されている法を前提として、それらの法を適用するにあたり、その対象たる人を差別してはならないという意味にのみ解してはならない。  

・言ってみれば、それは法の定立における平等、すなわち法の定立に当たって その内容そのものにおいて人を差別してはならないという意味をも含んでいる。

⇒したがって、平等の原則は法の適用に当たる行政権・司法権のみならず、場合によっては立法権をも拘束することになる。 


【参考】  

※「法の下の平等」とは

①法を執行し適用する行政権・司法権が国民を差別してはならない、という法適用平等の意味であるのか、

②法を定立する 立法権もまた平等原則に拘束され、法の内容そのものも国民を平等に取り 扱うべきだ、という法内容平等の意味も含むのか。

(芦部信喜『憲法学Ⅲ人 権各論(1)〔増補版〕』14 頁 【論議】  


※学説の整理

※「法適用平等説」(「立法者非拘束説」ともいう。)をとると、立法府は例え不平等な法律をつくってもよく、行政府はそれを平等に適用しさえすればよいとする。

⇒これに対し、「法内容平等説」(「立法者拘束説」ともいう。)をとる と、立法府は内容が平等な法律をつくるとともに、行政府はそれを平等に 適用することまで要求されることとなるとされる。 


・「「法の下の平等」とは、国政全般を直接拘束する法原則を意味し、法の適用 についての平等だけでなく、法の内容についての平等も当然要求されることになる。

⇒こ の点については今日の学説上の争いはほとんどみられることはない。 


・しかし、かつてはこの点につき法適用の平等に限定する有力な学説も見られたのは事実である。

⇒その学説(A 説=立法者非拘束説)には、ワイマール期のドイツでの解釈論争の影響がみられるが、14 条 1 項後段の差別の禁止は立法者をも拘束することになり、それと異なり、前段は法適用の平等を意味し、立法者を拘束しないと 解している。 


・しかし、多くの学説(B 説=立法者非拘束)は、それを「法の下の」と いう文言にとらわれすぎた解釈だとして、法の内容自体に不平等があるとき に、それを平等に適用しても意味がない上、そこでの「法」は狭い意味の 法律ではなく、憲法を含む広い意味での法を指すとみることもできるから、 「法の下の平等」が立法者を拘束するのは当然と解している。」

(参考)(野中・中 村・高橋・高見『憲法Ⅰ 第 3 版』264 頁) 


(二)相対的平等  

・「法の下の「平等」とは、各人の性別、能力、年齢、財産、職業、また は人と人との特別な関係などの種々の事実的・実質的差異を前提として、 法の与える特権の面でも法の課する義務の面でも、同一の事情と条件の下 では均等に取り扱うことを意味する。

・「平等」とは絶対的・機械的な平等ではなく、相対的平等だと言われるのは、その趣旨からである。 

⇒したがって、恣意的な差別は許されることはないが、法律上取扱いに差異が設けられる事項(事例:税、刑罰)と事実的・実質的な差異(事例:貧富の差、犯人の性格)との関係が、社会通念からみて合理的であるかぎり、そ の取扱い上の違いは平等違反ではないとされる。

【参考】(『憲法 第三版』芦部信 喜 124頁。下線部は事務局) 


・問題となるのは、この「社会通念上の合理性」を具体的に判断する基準は何かを明らかにすることである。

(1.4 憲法 14 条 1 項の構造と違憲審 査基準参照(8 頁)) 


【参考】  

※実質的平等と形式的平等 

・平等の内容について、事実上の不平等を積極的に是正する実質的平等を要求するものであるかどうかを基準とすれば、

①これを要求する実質的平等 (結果の平等:equality of opportunity)

②これを要求しない形式的平等(機会の平等:equality of results)の二つの概念がみられる。  

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